銀造

まるごとミュージアム 銀座奥野ビル306号室プロジェクト 発足10年記念企画展

 中央区まるごとミュージアムのご案内のパンフレットを手に取って、「江戸時代からの銀座」、「あこがれの銀座」、「二人の銀座」の舞台を歩きました。 素敵な青春時代は銀座とともにありました。「君の横顔、素敵だぜ・・・」なんていう歌謡曲、「心の底までしびれるような・・・」という銀座の恋の物語という名曲も生まれ、335万枚以上のレコードが購入されました。 昭和の繁栄は、銀座に暮らして、仕事をされた方と共ににあったとも言えるでしょう。 

 関東大震災の後、紙と木材の住居でなく、耐火できれば耐震を目指した建築は、モルタル、(出来たら、もっと堅固な鉄筋をと望みながら)、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート造り、その後は鉄筋コンクリート造も堅固だけの構造から耐震、免震構造に発展しているのが今日です。 素敵な、「銀座アパート」が完成したのが昭和七年でした。 その奥野ビルの306号室で美容室を開店して、銀座で働く女性の活躍を支えてくれたのが、「スダ美容室」でした。 11月8日の「まるごとミュージアム2020」の開催に合わせて、その306号室の見学が可能です。 お知らせのURLは、こちらです。 http://www.marugoto-chuo.jp/event/3037/

 

銀座奥野ビル306号室 スダ美容室

銀座奥野ビル306号室 スダ美容室 まるごとミュージアム 銀座奥野ビル306号室プロジェクト 発足10年記念企画展

 銀座奥野ビルは、銀座アパートという名称で営業を開始されました。

そのアパートの中で、306号室を賃借した、「須田ヨシ子さん」が、アパートの住人及び近隣の女性を対象に始められたのが、「スダ美容室」です。 今回、この部屋の歴史と保存の会のリーダー、黑多弘文氏のご許可を得て、以下の史実を書き記させて頂きます。

銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト スダ美容室の看板

銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト スダ美容室の看板 まるごとミュージアム 銀座奥野ビル306号室プロジェクト 発足10年記念企画展

 配布して頂いた「銀座奥野ビル306号室プロジェクト」様による説明書をそのまま紹介させていただきます。

はじめに;

奥野ビル3階の薄暗い廊下には、「スダ美容室」という小さな看板が掲げられていました。 しゃれたデザインで、往時の雰囲気をそれとなく伝えるものでした。 しかし、少なくともここ十年ほどは、周囲を見渡しても美容室らしきものは見あたりません。たぶんこのフロアのどこかで開業していた美容室が店を閉め、看板だけが残されたのでしょう。 しかしそうした経緯はさておき、実体としては存在しない美容室の、雰囲気だけをしっかりと伝えるこの看板それ自体は、なんともなぞめいていて大変印象に残るものでした。

(この写真の看板自体は、最近の複製だとのことです)

 

 

銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト 銀座奥野ビルとプロジェクトの概要

銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト 銀座奥野ビルとプロジェクトの概要 まるごとミュージアム 銀座奥野ビル306号室プロジェクト 発足10年記念企画展

 頂いた説明書の続きです。

■銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト■

「銀座アパート」(現;奥野ビル)は一九三二年竣工しました。それから間もなく一人の女性が入居し美容室を開業します。 開戦、終戦、戦後の復興を経験し、昭和六十年代に廃業。 その後は住居として利用し、二〇〇九年、百歳を迎えた直後に逝去されました。

 わたしたちは幸いにして、遺品整理の後、修繕などの手が加えられる前に借り受けることができました。

銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト 活動の概要

銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト 活動の概要 まるごとミュージアム 銀座奥野ビル306号室プロジェクト 発足10年記念企画展

■概要■

「銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト」は、三〇六号室を維持しつつ活用しよう、という非営利活動です。

さまざまなバックグラウンドをもつメンバーが緩やかに関りあいながら、思い思いの企画を進めています。「維持」とはいえ、遺跡を保存するというような意味での維持ではありません。 三〇六号室では、たとえばペンキや壁紙が時々刻々朽ちて剥落し、前の借主の記憶は漂白されつつあります。 昭和初期から平成初期にかけてひかれた一本の線は、次第に点線になり、点と点の間隔が大きくなり、その間隔が極大化したとき、忘却されるのでしょう。

 「維持」というのは、こうした時間の経過に意図的に介入するのはよそう、ということです。 そして、一本の線が消えゆく中で、メンバー各自がいろいろな太さ、長さの線を引く、というのがこのプロジェクトなのです。 それぞれの線が・・・もちろん消えつつある線も含め・・・どのように接続するのかしないのか、そしてそれがわたしたちをどこに連れていくのかよくわかりませんが。

このプロジェクトの決めごとは次の二点です。

・メンバーは部屋を維持する家賃を負担すること

・利用に際しては「現状維持・現状復帰の原則」を遵守することはもちろん、維持すべきとされる「現状」には時間制が含まれるので、何をもって「現状」とするか、ということ自体がひとつのテーマです。

 ことほどさように実験的なプロジェクトです。 スケジュールを御確認いただき、ぜひ三〇六号室に足をお運びください。 

以上(原文のまま)

プロジェクトサイトは、https://room306project.tokyo/

住所:東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル 306号室