意匠の天才・小村雪岱の展覧会「小村雪岱スタイル」展開催中
三井記念美術館
「昭和の春信」とも呼ばれた画家・小村雪岱(1887-1940)の再評価の機運が高まっています。現在日比谷図書文化館で特別展「複製芸術家・小村雪岱」(~3/24)、そして「小村雪岱スタイルー江戸の粋から東京モダンへ」が三井記念美術館で開催中です。
小村雪岱は単に「画家」と呼ぶには収まりきらず、「装幀家」「小説挿絵画家」「舞台美術家」また発足間もない資生堂意匠部では商品や広告デザインにも携わり、今も使用されている「資生堂書体」の創作にもかかわっています。
この展覧会では装幀・挿絵・舞台装置画、そして貴重な肉筆画や版画など江戸の粋から東京モダンを体現した作品が紹介されています。出品作の多くは明治工芸の所蔵品で知られる京都清水三年坂美術館の所蔵作品で構成されています。
小村雪岱が生まれたのは埼玉県川越市ですが、明治35年(1902)15歳の時から明治43年(1910)23歳で根岸に転居するまで日本橋檜物町に住んでいます。
江戸から明治にかけての檜物町です。現在の八重洲1丁目一帯です。(地図は「日本橋街並み繁昌史」白石孝より)随筆を集めた「日本橋檜物町」は没後の昭和17年に刊行されています。小村雪岱が注目される契機となったのは泉鏡花の指名で鏡花作「日本橋」の装幀を手がけてからです。この時雪岱は27歳、この後鏡花本の装幀を多数担当するようになり、新聞や雑誌連載小説の挿絵画家としても有名になりました。「雪岱調」と呼ばれるようになった挿絵が評判で掲載新聞の購読部数が増えたとまでいわれるようになったほどです。「雪岱」という画号も泉鏡花から授けられたものです。
ミュージアム・ショップで販売されている絵はがき(各110円)です。
日本橋西河岸地蔵寺教会にこの小村雪岱の描いた「板絵着色お千世の図額」が所蔵されているのをご存知でしょうか。
昭和13年に泉鏡花原作「日本橋」を明治座で上演するとき、花柳章太郎が奉納したものです。西河岸地蔵寺教会は行基が彫ったとされ、江戸幕府初期に「黒衣の宰相」として知られた天海大僧正の念持仏といわれている地蔵菩薩を安置しています。
昨年のNHKの大河ドラマの主人公・明智光秀のラストシーンは「実は死なないで天海大僧正になった」という巷説を思わせるものでしたね。
展覧会は日時指定予約制です。
小村雪岱スタイル展 4月18日まで 11:00-16:00
中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
千代田区日比谷公園1-4
■日本橋地蔵寺教会
中央区日本橋八重洲1-2-5