下町トム

『坂本町』の名を偲んで

中央区兜町にある〔阪本小学校〕は明治6年(1873年)に「第一大学区第一中学区第一番小学 阪本学校」として創設された由緒ある学び舎です。元熊本藩主・細川家の下屋敷跡と伝わっています。当時の地名が「坂本町」でしたのでそう命名されたわけですが、「坂本」が「阪本」に変わったのはなぜでしょう。言葉の縁起を担ぐ意味があったのではないかと思われます。「大坂」が「大阪」に変わったのも明治になってからでした。

また〔坂本町公園〕は今も当時の地名を残す地域の憩いの場です。園内には兜町・茅場町まちかど展示館があり、地元の神輿や山車、祭礼関係の展示物を見学できます。

 『坂本町』の名を偲んで

実はこの「坂本」という地名はどこからきているかというと、この地にある日枝神社摂社と関係があります。日枝神社の総本宮は、近江(滋賀県)の坂本にある日吉大社です。神仏混淆の時代には比叡山と密接に関係のあった歴史ある神社です。ちなみに、「日吉」も「日枝」も語源は同じです。

江戸の真ん中の日枝神社の参道に発達した町なので、オリジナルの地名にあやかって「坂本」と名付けられました。残念ながら昭和初期に兜町に糾合されて町名としてはなくなりました。

先日、近江の坂本を訪ねてきました。大変風雅で趣のある町です。古い時代から縁のある土地とのゆかりを思い起こして、豊かな気分になりました。