『築地長屋6-7-7』
~王冠とあざみの酒場放浪記~
中央区のホームページを閲覧しますと
近代建築物調査100選がリストアップされており、
【平成23年から3ケ年にわたり、
近代建築物(区内に現存している建築物で概ね昭和40年以前に建設されたもの)に
関する調査を実施しました。
(更新日:2018年9月27日)】と明記されています。
これにより、中央区内のちょっと気になる年代物の建物について、
大まかな歴史を紐解くことが出来るようになりました。
https://www.city.chuo.lg.jp/bunka/timedomeakashi/kindai_kentikubutu_tyousa/kindai-ichiran.html
王冠とあざみの住む築地6丁目は、ことにその数が多く、
『乾電機』『乾家住宅』『磯住宅』と連なる三軒長屋は、昭和2年(1927年)の建築。
戦火を逃れて息づく、肘掛け付きの窓、ゆがみガラス、斜め格子戸など
都会のど真ん中に於いて
昭和初期の建物が現存する贅沢さに感銘を受けずにはいられません。
お天気が良く穏やかな日には、路上に折り畳みの椅子を出して
この風情ある建物をスケッチする方や、カメラを構える方を、よく見かけます。
ある日・・・去年あたりでしょうか・・・。この物件が賃貸に出されました。
聴き齧ったところによりますと、家賃が60万5000円、敷金が10ケ月とか・・・。
ひゃー。しかも入居するならリノベーション代金も相当でしょう。
ハラハラドキドキ見守っておりましたら、今年に入って動きがありました。
東の角の窓がブリキ板で覆われているのですが、
まずそこにマジックで書き込みがされました。
「立ち呑み屋をしようと思ってますが、
まだ名前が決まっておりません。
皆様の清き一票をお願いいたします。」
近隣はいろんな意味で、ざわつきました。。。
日に日に名前が書き込まれていくなか
「そんなに甘くないから今のうちにやめた方がいい」と
ワープロ打ちされた誹謗中傷または親心?の紙が貼られたこともありました。
世はまさにコロナ渦、飲食業界がのたうち廻っている時ですから
確かにそのような意見もあるかもしれません。
でも、わたしは、そのような状況下でも
一歩を踏み出そうとしている勇気に心意気を感じ、
中央区観光協会特派員的観点から、書き込みました。
『築地長屋6-7-8』←ああ、あそこかってすぐにわかる
この建物は観光資源です!
いろんな分野から、注目の的!
期待しています!(^^)
初夏~初秋まで、書き込みはどんどん増え続けました。
長屋には職人さんが数人入り、たっぷりと時間を掛けて(たぶんお金も)
丁寧に店内の造作が行われました。
そして、11月4日。
ついさっき、祝橋のたもとで出くわしたモトダン(元旦那)と
「軽く行きますか」という流れから「そういえばあそこが開店日かも・・・。」と
いざ築地長屋へと酒場放浪に乗り出しました。
案の定、目出度く、祝・開店!です。
すでに数人の立ち呑み客で賑わっています。
なんということでしょう!
欄間彫刻の窓、立ち呑み用の折り畳みカウンター、杉玉。
夕暮れに灯りが点いて、益々風情が増します。良いですねぇ。
特等のカウンターで「ひれ酒」「おでん」「てっさ」「里芋の揚げ出し」
「真子のピザ」「牛筋カレー」に舌鼓を打ちました。
美しい女将に惚れ惚れしながら
「そういえば、ここの店名は、なんと決着したの?」と問うと
細い指先で名刺が差し出されました。
店名は『築地長屋6-7-7』 なんと!!!!!
「えーっと、間違って6-7-8と書き込んだけれども、
それ、わたくしの、清き一票です!」
おーーーーっ!!!!!と歓声が沸き上がり
命名者には1年間の無料パスポート進呈・・・とはなりませんでしたが、
ちょこっとだけ御馳走になりました。
ちなみに、母体は東銀座に本店があるふぐ屋さんだそうで、
立ち呑みブースの隣は、ふぐをコースで堪能する母屋になっています。
さあ、「劇的ビフォーアフター」を遂げた美しい築地長屋を
ぜひ「建もの探訪」してみてください。