王冠とあざみ
修学旅行のバスから日本橋を見た時、美観を無視した眺めに
「わ…こんな街、嫌だ。上京することになってもこんな場所には近寄るまい。」と
固く心に誓ったのに、縁とは不思議なもので約34年前
宮城県の海の町から上京してすぐに勤務したのが
日本橋三越前「室一仲通り」(現:「むろまち小路」)のど真ん中
磯野ビルに入っている、オジサンばかり10数名の小さな商社。
「室一仲通り」は名だたる老舗が路の両脇にずらり。
「大和屋」「八木長本店」「伊勢定本店」「有便堂」「ミカド珈琲店」
「蛇の市本店」「利休庵」「貝新」「鮒佐」「神茂」「宇田川」
室町ということであれば「日本橋三越本店」「千疋屋総本店」「文明堂日本橋本店」
「にんべん日本橋本店」「日本橋割烹とよだ」まで。
また、いろは48組で編成された火消しのうち「い」組が室町の持ち場。
葬儀の「見送り木遣り」なども目の当たりにしてきた。
17年勤めたが、今のわたしを形成しているものは
すべて中央区日本橋室町で培われたと言っても過言ではないと想う。
会社のオジサン達は、田舎娘に対し、嬉々として
江戸一番の繁華街である“日本橋”の文化、格、粋、風流を仕込んだのである。
わたしの財産となった体現に心から感謝している。