蓄音機の音色が導くノスタルジア「シェルマン アートワークス」
新人特派員の苔(こけ)です。
銀座・木挽町通りを歩いていたとき、銀座三丁目郵便局の隣に、蓄音機のマークが目印の小さなお店が目に入りました。
一見するとギャラリーのようにも見える小さな店舗。普段なかなか足を踏み入れるタイプではないお店でしたが、意を決して飛び込んでみたところ、素敵な世界が広がっていました。
珍しい「SPレコード」がズラリ
ここ「シェルマン アートワークス」さんは、蓄音機とSPレコードの専門店です。
1Fに所狭しと並ぶのは「SP」と呼ばれる規格のレコード。皆さんが「レコード」という言葉で思い描くのは、一般的に「LP(Long Playing record)」と言われるもので、1950年頃から普及した規格です。このLPの普及にともなって、それ以前の規格が「SP(Standard Playing record)」と呼ばれるようになりました。
SPはLPよりも硬い素材でできているのが特徴。また演奏時の回転速度をLPよりも速く設定する必要があるため、現在販売されているようなレコードプレーヤーでは再生できないものもあるといいます。
古い時代のレコードのため、楽曲のラインナップとしてはクラシックやジャズが中心です。中には作曲家としても有名なラフマニノフ本人よって録音されたものなど、歴史的価値の高い作品も取り揃えています。
元々は蓄音機のおまけとしてレコードを付けていたそうですが、よりレコードのバリエーションが欲しいという要望に応えるうちに、いつの間にか世界的にも屈指のコレクションとなったと言います。2020年にNHKで放送された連続テレビ小説「エール」は大正・昭和の音楽史がテーマでしたが、時代にマッチした音楽を使いたいとの要望から、当店からレコードを提供したこともあったそうです。
蓄音機は見た目も音も迫力満点!
2Fに上がると、まず目に飛び込んでくるのは巨大なラッパ。
他の楽器同様、ラッパの部分が大きいほどより低い音まで幅広く表現できるとのことです。
こちらは蓄音機を発明したエジソンが創業した会社が制作したもの。一見するとレコードを置く場所が無いように見えますが、実はラッパの根元部分にある黒いものがレコードなのです。
当初のレコードは筒状で、この筒にらせん状に音声を刻んで記録していました。しかし、保管のしやすさなどもあり、今でも馴染みのある円盤状のものが主流となっていきました。
より高級志向でインテリアや工芸品としての性格を強めた「箱型」のものも多く生産されるようになりました。
箱の内部にいわゆる「ラッパ」の部分が収納されていて、蓄音機を使用しないときは手前の扉を締めて調度品として楽しみました。戦前は1台買うのに給料1年分ほどの値段が当たり前だったそうです。
お店の方のご厚意で、箱型タイプの蓄音機を試聴させていただきました。
電気を使わず、箱の横に取り付けられたハンドルを回すことで、ぜんまいに動力を蓄えます。音楽を再生するときに、一定の速度でレコードが回転しないと音が歪んでしまいます。これをうまく制御する技術が蓄音機には求められます。
レコードに針を乗せた瞬間の「サー」というかすれたような音、その後に弾けるようなピアノ、トランペットのメロディが体中に響きます。古い時代の音楽特有のどこかこもったような雰囲気はありますが、それでもイメージしていたより一音一音がはっきりと聞こえ、力強さと柔らかさの心地良いバランスを感じました。
自分が生まれる前、しかも異国の音楽でしたが、なぜかノスタルジックさを感じ、思わず目が潤んでしまいました。
「シェルマン アートワークス」さんでは蓄音機のミニコンサートなど、蓄音機を体感できるイベントも開催しているようですので、機会があれば是非皆さんもこの音色を味わってみてください。
店舗情報
株式会社シェルマン アートワークス
https://www.shellman-aw.co.jp/
中央区銀座3-14-16
03-3543-4848
※記事掲載にあたり許可をいただきました。ご協力ありがとうございます。