老舗そば屋「藪伊豆総本店」
▲「天せいろ」(1300円)
今回は、京橋・日本橋地域の老舗そば屋に伺いました。「藪伊豆総本店」さんをご紹介します。
江戸で一番古くからあったとされる京橋の「伊豆本」が、「神田やぶそば」ののれんに包含され、明治15年(1882年)「藪伊豆」として再出発。1996年、場所を現在の日本橋の地に移しつつ、137年続く老舗のそば屋です。
お店があるのは、かつて流れていた「楓川」(もみじがわ)という掘割と並行して走る通り(現在楓川は埋め立てられ、上に首都高速が走っています)で、比較的静かな立地です。ちょっと敷居が高い感じのする藪伊豆さんの立派な門構えの左隅に石碑を発見。「日本橋 江戸もみじ通り」と彫られています。どうやら、お店をこの地に移したときに建てられた石碑のようです。
「神田やぶ」を彷彿させるのが、帳場で出迎える女将さんの歌うような口調です。暖簾をくぐって店内に入るなり、「いらっしゃ~い」「ご新規ぃ~、一名様ぁ~」。こ、これは正に、神田やぶそばのあの板場に注文を通す女将さんの口調と同じではないですか!
▲「江戸もみじ通り」の石碑
最盛期、江戸のそば屋は4000店、屋台を含めるとその数倍を数えたといわれています。時代とともに食文化が変化していく中で、そば屋の本質はあまり変わっていないようです。その基本には、江戸を作り上げた男衆(肉体労働者)が好んだしょっぱい味のつゆがあり、安くて気取らないそば切りに庶民の“粋”が見え隠れします。
藪伊豆総本店も、そんな江戸っ子たちが愛した味と文化を大切に守り続けているそば屋です。そば粉へのこだわりはもちろんですが、ほかに「水切れの良い盛り付け」と「6種の削り節でとる出汁」も外せないポイントだそうです。
▲こだわりの天ぷらとそば
この日、私が頼んだのは「天せいろ」(1300円)です。情報にたがわず、せいろに盛られたそばの水切れの良いこと! 二段目のそばは、さらに表面から水が抜けているため、そばの香りがより強く感じられます。
ゴールデンウィーク真っ只中だったので、いつものランチメニューはやっていないとのことでしたが、藪伊豆のランチメニュー(下図)は、コスパも最高のようです。次回はぜひとも食したいものです。
▲おすすめ、昼のメニュー
石臼挽きの自家製そば粉を使用して丁寧にそばを打つ職人さんから、お客にストレスを感じさせずにテキパキと対応する花番さん、帳場を預かる女将さんに至るまで、江戸の粋なそば文化を大切に守り続けていることが実感できるお店です。
イベント情報
老舗の持つ重苦しい雰囲気を払拭して、軽妙な感じでそばを庶民に提供したい‥‥そんな思いから先代(5代目)のご主人が始めたのが「落語会」でした。6代目ご主人も、しっかりとその思いを受け継いでおり、寄席で腹を抱えて笑い、“おあと”は美味しいそばと料理で腹ごしらえするという「落語会」の催しは、現在も人気を博しています。
※イラスト:acworksさんによるイラストACからのイラストです(使用確認済み)
【イベント情報】
「第61回 三語楼とそばの会」
日時:5月25日(土) 15:30 開演
出演:柳家三語楼
演目:「紺屋高尾」「粗忽の釘」
木戸銭:3600円(そば・料理付き) ※落語のみは2000円
予約・問い合わせ:03-3242-1240
店舗情報
店舗名:藪伊豆総本店
住所:東京都中央区日本橋3-15-7
TEL:03-3242-1240
アクセス:「日本橋駅」D1出口より徒歩4分
営業時間:(月~金)11:00~15:00、17:00~21:00
(土・祝)11:30~15:00、17:00~20:00
定休日:日曜