2019秋・築地市場の今
築地の場内市場が豊洲に移転してから、そろそろ一年が経とうとしています。築地市場最後の開場日だった、2018年10月6日の土曜日。この日の築地市場にはたくさんの人が押し寄せて、身動きがとれないくらいだったのですが、築地市場を臨むことができる隅田川の対岸からも、移転を惜しむ人々が市場の方向に顔を向けていました。この日は本当に寂しかったですね。
先日、平日のランチタイムに久しぶりに築地市場跡地に行ってきたのですが、解体工事の様子を見ることができましたので、今回はその様子をご紹介してみます。
晴海通りを勝どきから築地の方に歩いて、隅田川を渡りました。勝鬨橋の上から市場跡地の方角を見ると、一年前にあったはずの市場の建物が、もうほとんど無くなっていました。
そのおかげというのもなんですが、橋上からは見えづらかった東京タワーを、根元のほうまで見ることができます。立ち並ぶビルの間で少し苦しそうにしているタワーですが、この勝鬨橋から根元まで見えるという点では、とても貴重な風景となっています。
そのまま晴海通りを築地方面に歩いていくと、市場の解体工事の内容を説明する掲示が現れます。
7月時点、8月時点といった感じで、工事の進捗や旧市場の風景の移り変わりが写真でわかります。これを見ると、解体しなければならない建物は、もうほとんど残っていないようです。市場が移転した理由のひとつとして、施設が手狭になった、という点があるのですが、掲示されている地図を見てみると、市場は広大な敷地であったことがわかります。その大きさはなんと、東京ドームの5個分だそうです。
そして築地六丁目の交差点を左に曲がって、波除稲荷神社のある方へ。程なくして駐車場の入り口に突き当たります。その右側にあるのが場外市場の「築地魚河岸・海幸橋棟」です。
築地魚河岸の屋上にのぼってみる
今日は、旧・場内市場の建物の解体の様子を見てみたいので、この海幸橋棟の屋上にのぼってみます。
屋上の窓から見えた眺めです。まるで、今までの歴史をもみ消してしまったかのように、築地市場が空っぽになっちゃいました。ゼロの風景です。見えなかったはずの築地大橋が見えますし、遥か遠くにはレインボーブリッジを臨むこともできます。手前の横断歩道は、場内市場の「海幸橋門」だった所。古びた守衛の建物だけが、今は違う用途で使われているのか、まだそこにたたずんでいました。
過去の写真を探してみたら、偶然にも同じようなアングルで撮っていたのがありました。2016年暮れの写真です。人の記憶というものは本当に儚いもので、写真がなければここに何が建っていたかを思い出すこともできませんでした。本当に何もかもが無くなってしまったのですねぇ。
解体工事で一番気になっている場所があるので、今日はそれを探してみます。海幸橋棟の屋上からは、フェンス越しですが今の工事現場の多くを臨むことができます。
場内市場の中でも大好きだった空間が、「魚河岸水神社」の丘。場内市場に入った時には、必ずこの神社に来ていたので、工事がずっと気になっていました。周りの建物がすべて取り壊されているなか、緑のもりもりとしたこの丘は、砂漠の中のオアシスのようにポツンと残されています。この丘は今後、どうなってしまうのでしょうか。
この緑の丘のように、市場跡地のすべてがリバーパークのような緑に覆われたとしたら、どんなに素晴らしい都会のオアシスになるだろう、と想像してしまいました。でも土地の有効活用という点では、実現の難しい望みでしょうか。
この場内市場だった敷地は、とりあえず東京五輪の駐車場として整備される予定です。ですがそのあとの土地利用は、方針こそ公表されているものの、まだあやふやな状況。無限の可能性を秘めたこの場所が今後どのような色に染まっていくのか、とても興味深いところです。
歴史的に見ると、ここは明治大正の頃には海軍の施設、その前の江戸時代には大名屋敷や松平定信の別邸の「浴恩園」がありました。そのため、これらの遺跡がこの地面の下に埋もれている可能性があるらしく、五輪後に発掘調査が行われるという話も聞いています。歴史ファンにとっては無限の夢が埋もれているという事で、こちらのほうも非常に楽しみな状況です。
この後、観光客で溢れる場外市場の方に出てみました。
築地の場外市場は、相変わらず賑やかです。東京の中でも、一番アジアな雰囲気があるとも言えるこの築地場外市場。外国人観光客がものすごく多くて、ここは日本なのか?と思ってしまうほどです。今日は海鮮丼とかを食べようと思っていたのですが、工事の風景を臨みながら食べたくなったので、松露サンドを買ってから築地魚河岸の屋上に戻り、そこでランチとしました。
最近だいぶ涼しくなってきました。場外市場は秋になると、いろいろなイベントが増えてきます。この場外市場にはホームページがございまして、いろいろな情報が掲載されていますので、お越しの際には是非チェックをしていただくことをお勧めします。イベントにあわせてご来場いただけると、よりこの場外市場をお楽しみいただけるかと思います。
●築地場外市場ホームページ →こちら
築地魚河岸は →こちら