下町トム

年季のこもった「大入り額」の味わい

このところ、下町情緒あふれる昔ながらの大衆酒場はだんだん少なくなってきているように思います。コロナ禍でさらにその傾向が加速されなければよいと願うばかりです。

それでも、中央区には古い酒場がまだいくつか残っていて、飾らぬ雰囲気を愛する人たちにとって大切な場所になっています。

時々そんな店で掲げてあるのが「大入り額」です。主に開店の時に関係者や贔屓筋からお祝いに贈るものです。昔はそのような風習がなじんでいたものの、最近はめっきりとそういう営みも少なくなり、だんだん貴重なものになっていっているそうです。

 年季のこもった「大入り額」の味わい

ぼくがたまに訪れるのが〔銀座升本〕には、その「大入り額」が年季を感じさせる風合いで掲げられています。ここは、日本一の繁華街の路地裏にしっかりとその存在感を発揮している店です。開業は1953(昭和28)年。東京には〔升本〕を名乗る酒屋さんや居酒屋が多くありますが、いずれももともと神楽坂で長く続く〔升本総本店〕から暖簾分けで広がっていったと聞いています。銀座の〔升本〕も神楽坂ー新橋ー銀座とつながっているそうです。

仕事帰りに、あるいはショッピングの合間に、「ちょっと一杯」という気分にさせてくれる店構えです。銀座にはこのような個性的な店がまだまだたくさんありますので、皆さんぜひ路地散歩の際にお訊ねください。