しばしばしばた

中央区はゾウとの縁が深いんだぞう

先月(2024年6月)は、6年ぶりの本格開催となった山王祭がありましたね。
私は「中央エフエム」さんの番組で6月9日(日)の「下町連合渡御」の生中継をスタジオから盛り上げるという貴重な機会をいただき、一風変わった楽しみ方をさせていただきました。中央通り一帯が久しぶりにお祭りの熱気に包まれる様子は感慨深かったです。
 
さて、「下町連合渡御」に並ぶみどころである「神幸祭」は、その2日前の6月7日(金)に無事斎行されました。
さまざまな御鳳輦・宮神輿・山車などが行列を成して千代田区にある日枝神社と中央区の街の間を巡行する神幸祭ですが、今年の目玉の1つは、初登場の「象山車」でした。
(象山車については東京ダンボさんの昨年の記事で詳しく解説してくださっていて、当日は隅田の花火さんの記事にて追ってくださっています!)
私も神幸祭の当日は銀座に見に行ってきました。平日でしたが沿道にはたくさんの見物客の方がいらっしゃり、その中でブランドショップの並ぶ街並みをゾウが通り抜けていく、非日常の様子を味わうことができました。

浜離宮で飼われていたゾウ

浜離宮で飼われていたゾウ 中央区はゾウとの縁が深いんだぞう

さて、この「象山車」を見ていて、中央区はゾウといろいろな関わりがあるな、と思いました。
まず、江戸時代の8代将軍徳川吉宗公のころ、ベトナムから長崎や京都を経て、江戸にゾウがやってきました。
(このことについては小江戸板橋さんの記事にて、詳しく解説してくださっています!)
 
江戸市中を練り歩いたゾウは、浜離宮庭園の中で12年間に亘って飼育されたそうです。
今は跡形もないですが、この写真で赤い丸をしたあたりに飼育所があったとのことです。
 
当時の山王祭にも象山車が登場していたのは、このような出来事を反映しているのですね。

デパートの屋上で暮らしたゾウ

デパートの屋上で暮らしたゾウ 中央区はゾウとの縁が深いんだぞう

うってかわって戦後の1950年、日本橋髙島屋の屋上へ、タイからメスの子ゾウがやってきました。
山口県の下関港に上陸したこのゾウは、貨物として列車で運ばれて汐留貨物駅に到着、トラックで中央通りをパレードしたそうです。そして、屋上へはカゴごとクレーンで吊り上げて運ばれたとのこと。この様子は写真にも残っています。
江戸時代のゾウと比べて近代的な運び方で中央区にやってきたこのゾウは「高子」と名付けられ、1954年までの4年間、日本橋髙島屋の屋上で多くのお客様に愛されてきました。
1954年に上野動物園へお引越しすることになったものの、大きく成長していたためクレーンで吊り上げられず、なんと、百貨店の館内を歩いて降りていったそうです。想像するだけでもビックリしますね!

浜町で見つかったゾウ

浜町で見つかったゾウ 中央区はゾウとの縁が深いんだぞう

昨年、浜町公園の入口の並木道のところに、ナウマンゾウのイラストが描かれた解説板が設置されたのをご存知でしょうか?
(これについてはユタポンさんパッシブたわしさんが記事にしてくださっています)
 
じつは、1976年都営新宿線の工事をするときに、ナウマンゾウの化石が3頭分発掘されこれらは「浜町標本」と名付けられているそうで、このことが解説されています。
江戸時代や昭和時代にゾウが街中で暮らして話題になるよりずーっと前に、ゾウが中央区内に生息していたんですね。

日本銀行でも見つかったゾウ

日本銀行でも見つかったゾウ 中央区はゾウとの縁が深いんだぞう

日本橋本石町にある、新紙幣発行で話題の「日本銀行」さん。じつは、浜町公園でナウマンゾウが見つかる数十年前の1930年と1933年、本館の周りで増築工事を行う際に、ここでもナウマンゾウの化石が見つかっています。
見つかったナウマンゾウの化石は日本銀行さんで大切に保管されているとのこと。一般の観光客が目にすることはできませんが、日本の金融の中心地にも、ゾウが住んでいたのですね!

江戸橋で見つかり、ナウマン先生が論文に掲載したゾウ

江戸橋で見つかり、ナウマン先生が論文に掲載したゾウ 中央区はゾウとの縁が深いんだぞう

さらに遡って、1879年には江戸橋付近でも、日本橋川の工事をしているときにナウマンゾウの化石が見つかっています。この化石は、ナウマンゾウの名前の由来にもなっているドイツの地質学者・ナウマン先生の「Japanische Elephanten der Vorzeit」という論文にも、TokioYedobashiで見つかったものとして掲載されています。
この重要な化石は、現在、文京区にある東京大学の博物館で保存されているそうです。中央区内でこんなにたくさんナウマンゾウが見つかっていたのですね!

本質を「象」る

本質を「象」る 中央区はゾウとの縁が深いんだぞう

ところで、京橋のアーティゾン美術館で今週末7月7日まで開催中の「ブランクーシ展」の副題が「本質を象る」となっています。
これは、ゾウ…ではなく、「かたど-る」と読みます。一説には、象牙が様々な細工物に使われたことから、「象」という漢字に「かたどる」「かたち」といった意味がつくようになったとか。
ブランクーシさんが彫刻の世界でどのような「かたち」を切り開いていったのか、貴重な作品群を通して感じることのできる展覧会でした!
 
というわけで、本日は、中央区と様々な「ゾウ」「象」のかかわりをご紹介しました。
中央区の街を歩く際に、ぜひ思い出してみてください!