銀造

日動画廊 入口の二体の石像のこと

 「画廊の夜会」について、「5月30日にご報告」しましたら、記事を見て下さった日動画廊の広報の方から、入り口に展示している二体の石像についてのご説明を頂きました。 次の通りです。

 

 日動画廊の開店から二、三年して、(当時の自宅から)そう遠くない谷中に「萬古庵」という骨董屋があった。主人の吉村亥之助さんは70を超したご老人で、さほど広くもない店の中に朝鮮ものの陶磁器や、箪笥や戸だな、こまごました民芸品などを、足の踏み場もないくらい置いていた。年に二、三度朝鮮に渡り、大量の骨董類を京城(ソウル)あたりで仕入れてくるのだが、金づかいも荒く、商売もうまくないらしく、懐具合はあまり良くないようだった。近所でも変人でとおっていて、人々はみな、れっきとした日本人の吉村さんを、「朝鮮じいさん」と呼んでいた。
 この朝鮮じいさんの仕入れてきたものを、わたしの店に並べてくれないかという依頼を受けた。銀座の画廊の試みとしては少しばかり邪道だとは思ったが、気持ちよくお受けした。「朝鮮骨董即売会」は意外なほど評判がよく、よく売れた。これが縁で、昭和13年ごろのことだったか、朝鮮爺さんが仕入れた大小さまざまな石の彫像を店の前で展示即売したことがあった。
 爺さんの説明によると、向こうでは貴族の霊廟というと決まってこれが置かれていて、日本でいえば東照宮などにある、各大名から奉納された灯篭のようなものだということであった。正確なところはわからなかったが、一見無表情でいて、おおらかで、素朴な味わいがあった。仕入れてきたじいさん以上に、私の方がすっかり魅せられて、大小20数点を、全部私が買い取ったのである。(中略)そうしている間に大部分が売れて、最後に高さが2・4メートルの二体が売れ残った。大きすぎるので、買い手がつかなかったが、実は一度太平洋戦争中ある人が売る目的で買った。ところが一年たっても、二年たっても店に買い手は現れず、持ち主はついにその値段の絵ととりかえてくれないかという相談を私にしてきた、私としても内心はこの石彫と離れがたい気にもなっていたときで、喜んでその求めに応じた。そしてそれ以後、完全に私の画廊のものになったのである。
 私は画廊を開いた時から、いつか店の入り口の両脇に何かの彫刻を置くとするなら、ブロンズのアダムとイブの像あたりが適当だろうと考えていた。ところがそのイメージぴったりの作品に出合わないうちに時が流れて、いつの間にかあの二体の像がそこにそなわっていてくれたのである。最初は玄関番のような形で、今は守護神として。        

長谷川仁 著『へそ人生』投稿原稿

国立博物館の石像「文官」

国立博物館の石像「文官」 日動画廊 入口の二体の石像のこと

 写真は、国立博物館に設置されている「文官」の石像二体です。

赤坂の高橋是清翁記念公園で、同じような石像を見かけたという方もいらっしゃるでしょう。

この石像は優しく迎えてくれていると感じて、出会った時には何かほっとした記憶があります。

暑いときも寒い時も銀座へ

 銀座の画廊は多くが地下鉄の駅から至近距離にあります。

日動画廊は東京メトロ銀座駅から、JR有楽町駅からも近く、地下道を通れば汗をかく暇もありません。

涼しいところで名画を鑑賞して、お気にいればお買い上げできます。

どうぞ、銀座でお楽しみ下さい。