4月大歌舞伎『裏表先代萩』
ー 陰謀渦巻く波乱の物語 ー
「裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)」とは
「先代萩」とは、江戸時代の仙台藩に伝わるお家騒動、いわゆる伊達騒動を題材にした物語の総称です。実際の歴史的事件をもとにしながら、若き主君をめぐる権力争いが描かれています。
この「先代萩」には、さまざまな演目がありますが、なかでも、乳母・政岡の物語はとりわけ重要な位置を占めています。わが子を犠牲にしてでも主君の命を守ろうとするその姿を中心に描いた「伽蘿先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」は、人間ドラマとしての深みを持ち、多くの観客の涙を誘う名場面で知られています。
今回上演される「裏表先代萩」は、そうした物語の系譜を踏まえつつ、怪しげな気配が漂うなか陰謀を織り交ぜた、より娯楽性豊かな趣向で描かれています。
【あらすじ】
序幕 花水橋の場
藩主足利頼兼(中村歌昇)は仁木弾正(尾上菊五郎)らにそそのかされて遊興に溺れ、毎夜遊郭に通う。
頼兼を暗殺するため、鬼面一味が、花水橋で待ち伏せして襲撃する。相撲取りの絹川谷蔵(中村種之助)が加勢して、頼兼を逃がす。
二幕目 大場道益宅の場
管領・山名宗全の主治医である大場道益(坂東彌十郎)は、お竹(中村七之助)を妾にしようと樫蔵に口説かせるが失敗する。道益はお竹を家に引き入れて口説くが、来客の隙にお竹は逃げる。
お竹の父の佐五兵衛は、甥の不始末のため、2両を工面してほしいとお竹に頼む。お竹は困りつつも承知し、奉公先の下駄屋にお金の工面を頼んだことで、逆に折檻される。
一方、道益は山名宗全から鶴千代(尾上琴也)毒殺用の毒薬を依頼されていた。200両を見せられ、宗全に毒薬の調合を教える。小助(尾上菊五郎)がこれを盗み聞きする。
そこにお竹がやってきて、2両を借りたいと相談。道益は先ほどの200両から2両を出して貸してやるが、お竹に抱き着こうとするので、びっくりしたお竹は下駄の片方を道益のものと間違えて逃げる。
そこに忍び込んだ小助は道益を殺し、金を盗み、ひとまず床下に隠す。
しかし、その金を犬くわえて佐五兵衛の花かごに移してしまう。宗益の死体が見つかるが、小助は金がなくなっていて動揺する。
三幕目 足利家御殿の場
ついに頼兼は隠居させられ、幼い鶴千代が家督を継ぐ。鬼面一味は鶴千代を殺そうと狙っている。
鶴千代の乳母である政岡(8世尾上菊五郎)は毒を恐れ、自分が作った食事のみを与え、毒見役として我が子・千松(中村秀乃介)に命じる。
政岡が食事の支度をしていると、宗全の奥方栄御前(中村萬次郎)が訪れ、見舞いの菓子を鶴千代に勧める。管領夫人の菓子を断れず、政岡が進退極まったところ、千松が飛び出してその菓子を食べる。
菓子にはやはり毒が仕込まれており、千松は苦しむ。毒の発覚を防ぐため、栄御前の配下の八汐(坂東彌十郎)は千松を無礼者と言って刺し殺す。
わが子の死にも政岡は、顔色ひとつ変えない。
これを見ていた栄御前は、政岡が千松と鶴千代を取り替えて育てたのだろうと思い込む。そして、二人だけになった時、陰謀への加担を政岡に持ちかけ、その連判状を預けて帰っていく。
政岡は千代松の遺体を抱きしめ、主君の身代わりとなったことを涙ながらにほめてやる。そして政岡は八汐を討つ。
その時、ネズミ(正体は仁木弾正)が現れ、連判状をくわえて逃げていく。
床下の場
床下では、荒獅子男之助(中村萬太郎)が見張りをしていたが、鼠を捕え損ねる。すると、弾正が正体を現し、嘲笑して消える。
大詰 問注所小助対決の場
大場道益殺しの取調べで、現場に残された下駄などの証拠から、お竹が犯人と決めつけられる。
お竹は、金は借りたが殺していないと必死で訴える。すると、お竹の父・佐五兵衛が花かごに血の付いた198両を発見したとやってくる。裁きに当たった倉橋弥十郎(中村勘九郎)は、なぜ一介の町医者が大金を持っていたのかと疑問を持つ。
そして、証拠の一つである渋紙を取り出し、血の付いた足跡を調べ、小助の足を乗せてみるように言うが、小助ははぐらかす。小助を捕らえて襦袢を調べると、片袖がなく、それは金を包んでいたものと同じだった。ついに小助は罪を認める。
お竹親子は、弥十郎の裁きに感謝する。
控所仁木刃傷の場
幕府は、鶴千代の家督相続を認める。追い詰められた弾正は、忠臣である渡辺外記左衛門(河原崎権十郎)を殺そうとするが、重傷を負いながらも、外記は弾正を討つ。
細川勝元は、外記の働きをねぎらい、ひとさし舞うように言う。外記は最後の力で舞い、勝元は忠臣ぶりを褒めたたえるのだった。
『裏表先代萩』に登場する役者の家系図
年齢は、本年3月1日現在
黄色網掛けが出演者
陰謀や人の想いが交錯する本作は、スリリングで心をうつドラマが展開する、見どころたっぷりの作品です。
舞台ならではの臨場感の中で、「裏表先代萩」の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【浮世絵の出典】
冒頭から順番に
①おぢやWebミュージアム 「伽羅先代萩」
ID 04-000-00101 豊原国周作 1888年
②早稲田大学演劇博物館デジタル
「鶴きよ」「政岡」「千松」
歌川国芳作 製作1849年
③早稲田大学演劇博物館デジタル
「仁木弾正 市川九蔵」
豊原周延作 制作1882年
オフィシャル