あすなろ

鏑木清方が愛した明治の築地明石町

「築地明石町」で知られる美人画の巨匠・鏑木清方。彼には、類まれなる随筆家としての顔がありました。

雅号は、紫陽花舎(あちさゐのや)。
名著『東京の四季』などを遺し、失われゆく明治の東京の日常を五感に響く言葉で活写しました。画家ならではの鋭い観察眼と豊かな色彩感覚によって綴られた江戸の情緒や市井(しせい)の暮らしは、どれも匂い立つように美しく、古き良き江戸・明治の風景を現代の東京へと今に伝えています。

 鏑木清方が愛した明治の築地明石町

たとえば、名作『築地明石町』の背景に小さく描かれた「帆前船(ほまえせん)」の情景だけを取り上げ、一篇の散文詩を書きつけた一軸(掛け軸)が遺されています。その内容は、次のようなものです。

居留地なる異人館の
垣に絡みて
まだ咲き残る蕣(あさがお)の
いと小さき花をつけたり
築地の海は
雲母(きらら)色の靄(もや)
深く立ちこめて
朝冷えは膚(はだ)に沁(し)む
袖かき合わせて
ふとかへり見る
いぎりす巻の女の瞳に
澄むや秋

 鏑木清方が愛した明治の築地明石町

清方の卓越した色彩感覚が、言葉からも鮮やかな情景として浮かび上がります。巨匠が遺した美しい絵画と随筆を通じて、当時の残り香をそっと探しながら、初秋の東京・中央区の街をめぐられてみてはいかがでしょうか。

 鏑木清方が愛した明治の築地明石町

築地外国人居留地跡
 東京都中央区明石町1-15 
 明石小学校 居留地通り沿い

◆あかつき公園
 東京都中央区築地7-19-1

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