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春に読みたい!「春」と「中央区」がキーワードの小説3選


こんにちは。普段は自称アクティブ特派員なのですが、ここのところ外出を自粛しているHanes(ハネス)です!
そんな時こそ、家で文学の世界に浸るのにはうってつけ。
近年電子書籍がますます普及し、文豪の作品も家に居ながらにして手軽に読めるようになりました。
今回は「春」「中央区」をキーワードに、個人的にピックアップした春に読みたい文豪の3作品をご紹介します♫
(※緊急事態宣言を受け、中央区立図書館全館(京橋、日本橋、月島)は4月8日(水)から5月6日(水)まで休館中です。最新情報はこちらでご確認ください。)

島崎藤村『春』

まずは、タイトルそのものが『春』島崎藤村の長編小説をピックアップ!
この作品は、教え子との実らぬ恋や尊敬する人の自殺を含む苦悩を描いた青春小説で、藤村初の自伝小説と言われています。
理想と現実のはざまで苦しみながら、小説に登場する若者たちはそれぞれの道を見つけるというもの。
タイトルにある『春』は内容とどのように結びついてくるのか...それは読んでからのお楽しみ。

 春に読みたい!「春」と「中央区」がキーワードの小説3選


そんな藤村は、岐阜県中津川市馬籠生まれで、自然主義文学を代表する作家として知られています。
小学生の頃に早々と上京した後、中央区内の歴史ある学校の一つ泰明小学校に通いました。
現在は、学校に彼の名前が記された石碑や案内板が設置されています。

しかし、中央区との関連性はそれだけではありません。
には、1905年に仙台市から移築された建物を使用し開業された割烹旅館「海水館跡」があります。
当時は東京湾を一望できる風光明媚で閑散とした場所だったことから、多くの著名な文化人が好んで滞在しました。
勿論、藤村もその一人で、今回ご紹介した作品『春』はこの旅館で執筆されたんです。

中央区外での島崎藤村については、先輩特派員にゃんボクさんの「島崎藤村氏の青年期を形作る小諸での日々」も合わせてご覧ください。

谷崎潤一郎『春琴抄』

続いてご紹介するのは、究極の耽美主義小説とも言われている谷崎潤一郎『春琴抄』
タイトルに「春」という言葉が入っていたことと谷崎が中央区に関係していること(後述)からこの作品を選びました。

こちらは大阪を舞台とした、春琴(本名は鵙屋琴(もずやこと))という盲目の三味線弾きと、そのお付きの男佐助の物語です。
春琴は美しい美貌を持つわがままな女性ですが、三味線を弾かせると右に出る者はいないほど。
しかしある夜、正体不明の賊が就寝中の春琴のもとに忍び込み、顔面に熱湯をかけるという事件が起こります。
佐助にはやけどを負ったひどい顔を見てほしくないと春琴は言うものの、顔の包帯が取れたらお世話をするうえで佐助はその顔を見なくてはいけなくなる...
そんな状況に苦しんだ佐助が取った行動とは?

この作品を元にした宝塚の公演もあり、その後も様々な舞台等で取り上げられています。

 春に読みたい!「春」と「中央区」がキーワードの小説3選


さて肝心の谷崎と中央区の関係ですが、日本橋人形町(当時は日本橋区蛎殻町)には「谷崎潤一郎生誕の地」があります。
個人的には数年前から「幻の羊かん 細雪」が気になっているのですが、今では本当に購入することのできない幻の羊羹のようです。
召し上がったことのある方がいらっしゃいましたら、ぜひ感想をお聞かせいただきたいほど。

少々話が脱線しましたが、こちらの案内板からもわかる通り、彼が生まれた頃はここで祖父が活版所を経営していました。

 春に読みたい!「春」と「中央区」がキーワードの小説3選


人形町は江戸情緒が残る下町として人気のエリアです。
彼の生家を含め、Google mapではバーチャルまち歩き(リンク先:生家)が楽しめます。
ご自宅にいる時間を利用して、感染症が終息した後の人形町訪問の計画を立ててみませんか?

泉鏡花『日本橋』

最後は、小説に加え戯曲としても知られる泉鏡花『日本橋』
時代は大正初め。性格が正反対の日本橋の名妓2人を取り巻く恋愛事情から物語が展開します。

本作品中には、「雛の節句のあくる晩、春で、朧で、御縁日。 同じ栄螺(さざえ)と蛤(はまぐり)を放して、 巡査の帳面に、名を並べて、女房と名告(の)つて、 一所に詣る西河岸の、お地蔵様が 縁結び。 これで出来なきや、日本は暗夜(やみ)だわ」という名妓の1人による名台詞があります。

詳しくは先輩特派員小猿さんの「春で、朧で、日本橋」や、与太朗さんの「泉鏡花の『日本橋』を歩く」をご覧いただきたいのですが、ここでいう西河岸のお地蔵様は現在もお参りすることができます。

 春に読みたい!「春」と「中央区」がキーワードの小説3選


それが、八重洲1丁目にある日本橋西河岸地蔵寺教会です。
区民有形文化財で、中央区観光検定にもたびたび出題されている「板絵着色お千世の図額附目録」もここにあります。
この図額は、日本橋区本銀町生まれの新派俳優で、『日本橋』のお千世役を演じた花柳章太郎によって昭和初期に奉納されました。
額面の右下には、花柳章太郎が詠の句「桃割に 結ひてもらひし 春日かな」、左下には、泉鏡花の句「初蝶の まひまひ拝す 御堂かな」が見て取れます。
詳しくは上記リンク先でご確認ください。

おわりに

今回は「春」と「中央区」をキーワードに選んだ3作品をご紹介しましたが、気になる作品はありましたでしょうか?
個人的に日本の文豪の作品は「難しそう」という先入観からあまり読んだことがなかったのですが、角度を変えて改めて内容や中央区との繋がりを見てみたところ、「これは面白そう!」とこれまでのイメージをガラっと変えることができました。

引き続き、ユニークな視点から中央区の「新たな魅力」をお伝えできるよう努めてまいります^^