小江戸板橋

正義の朱赤の、おすそ分け

 

あぁ、いい。

この赤は、素敵だ。

鮮やかな中に、渋みも感じる。

じっと見入ってしまう、力がある。

 

紅葉に映える秋の山々。

朱の鳥居の赤。

ベンガラ格子の鉄さびの赤。

唇にさした貝紅の赤。

赤を辿ると、千年の古都に心が飛翔する。

 

東銀座、歌舞伎座を囲むように、役者さんのご贔屓の店が並ぶ。

「銀座 白金や」。「ぷらちなや」と読む。

その手土産袋の深紅に惹かれた。

 

 正義の朱赤の、おすそ分け

 

「ねえねえ、何、入っているの?」

「開けていい?」

「あっ、おいなりさん!」

「ちょっと、高級そう」

「おあげの表面に焼きが入っている」

「これは初めて」

「焼くが旨くなるが、役が上手くなる。験担ぎだって。」

「食べていい?」

「どれにしようかな」

 

「これ胡桃が入っている」

『季節の変わり種だって。』

「うん、美味しい!」

「もっと食べていい?」

「山椒でしょ。紅生姜と。紫蘇。胡麻・・」

「いくらでもお腹に入ってしまう。うふ。」

『これはいけない食べ物ですね。』

 

 正義の朱赤の、おすそ分け

 

形が小ぶりなのは、楽屋で役者さんが化粧のままでも食べられるようにとの配慮から。

そういえば赤には、歌舞伎の隈取りの赤もある。

血潮みなぎる赤は、正義の強さ、勇気を表わすヒーローの色だ。

皆がもっともっと、元気になりますように。

どうぞ、おすそ分け。

 

お店は、銀座4-13-16。

10時から19時までの営業ですが、完売しだい閉店とのこと。