【銀座八丁目】名建築を未来に伝える「中銀カプセルスタイル」 by いのちゃん

2021.1.17 15:00

いのちゃん

【銀座八丁目】名建築を未来に伝える「中銀カプセルスタイル」

銀座八丁目に建つ中銀カプセルタワービルが本になりました。
外出がままならない今、中央区の名建築を家にいながら楽しむことができるおすすめの一冊です。

『中銀カプセルスタイル　20人の物語で見る誰も知らないカプセルタワー』草思社（以下『中銀カプセルスタイル』）

前回の記事もあわせてご覧ください。
【銀座八丁目】カプセルの中のストーリー「中銀カプセルタワービル」

※前回の記事では『中銀カプセルスタイル　20ストーリーズ』という仮タイトルでご紹介しました。

本でめぐるルームツアー

今回、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトがクローズアップした20のカプセルは実際に住居やオフィスとして使用されているプライベートな空間。普段は公開していないカプセル内部とそのカプセルにまつわる人々を主役に据えることで見えてくる20の物語が『中銀カプセルスタイル』です。

無印良品とコラボレーションした「無印カプセル」。マンスリーカプセルとして稼働してきました。

住人は「メタボリズムをじかに感じてみたかった」という若き建築家。

あっ、カプセル関係のSNSによく登場するDJコスプレイヤーさんの部屋だ！

ほかにも、さまざまなスタイルのカプセルがありました。このようなライフスタイルに着目した書籍といえば、1990年代前半の東京に暮らす人々の生活空間をリアルに写した名著が思い浮かびますが、同じマンションの20部屋を一冊におさめた本というのは聞いたことがありません。しかもそのすべてが同じ形、同じ体積の部屋なのです。『中銀カプセルスタイル』は世界にも例を見ない建築本と言えるのではないでしょうか。

『中銀カプセルスタイル』が未来に残すもの

中銀カプセルタワービルは黒川紀章氏が提唱したメタボリズム建築の代表作。もともとは独立したカプセルが新しいものに交換されるコンセプトになっていました。しかしながら、1972年の竣工から現在に至るまで一度も交換されたことはありません。

もしカプセルの交換が実現していたら、これほどまでにリノベーションを遂げたカプセルが生まれることもなかったはず。建築家の意図しない形でカプセルのひとつひとつが時代や環境に合わせて自由に変化を続けてきたのです。

中銀カプセルタワービルが今後どのような運命をたどるとしても、初期カプセルの最終形態を記録した『中銀カプセルスタイル』は、この歴史的建築物の記憶を呼び起こす鍵となることでしょう。

復刻版パンフレット

こちらは中銀カプセルタワービルが竣工した当時のパンフレットの復刻版です。

現存する完全体がないため、複数のパンフレットをつなぎ合わせて、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトが復元しました。ところどころ破れた痕や変色している部分が時代をおびた味となっています。

分譲マンション（マンシオン！）として販売され、ビジネスカプセルという位置付けだったことがわかります。当初はカプセルレディと呼ばれる秘書サービスや、ルームキーパーなどのサービスがありました。

1970年代の最先端。当時をうかがい知ることができる貴重な資料です。

この復刻版パンフレットは書店では流通していません。中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトが催行する見学ツアーに参加した際に入手しました。

緊急事態宣言の間、ツアーは一時中断しています。Twitterやホームページで再開のお知らせをお待ちください。

「マンスリーカプセル」終了のお知らせ

１か月単位でカプセル生活を体験できるマンスリーカプセルは2021年2月23日からの入居（第29期）をもって終了することになりました。現在、最後の申し込みを受付中です。ご興味のある方はお急ぎください。

これまで、延べ200人以上が住人となったマンスリーカプセル。その後はさらにディープなファンとなり、カプセル滞在記をウェブで公開する人、同時期に入居した“同期”たちとの交流を深める人、カプセルの購入を決めてオーナーとなった人――。カプセルを通して多くの人々がつながり、物語は続いていきます。人生を変えるかもしれないカプセルでの生活。最後の住人となる幸運の持ち主はどなたでしょうか。