いのちゃん

【東銀座】 路地裏から見つめる東京の今むかし
「木挽町よしや」


芸術の秋だからというわけではないのですが、先日、古典歌舞伎のオンライン公演を鑑賞する機会がありました。画面を通しての歌舞伎鑑賞は字幕解説付きで、舞台全体を見渡しやすく、演じ手の所作や表情はカメラがしっかりと捉えているので、見せ場を余すことなく堪能できました。生の舞台が素晴らしいことは言うまでもありませんが、動画配信サービスにも俄然興味がわきました。

中央区歌舞伎といえば歌舞伎座ですね。今日は演目についてではなく、歌舞伎座界隈の路地裏に佇む老舗和菓子店、木挽町よしや(こびきちょうよしや)についてお話ししたいと思います。

まずは名物のご紹介から

木挽町よしや歌舞伎界をはじめ、芸能関係者御用達のお店としても知られています。名物はかわいらしい半月型のどら焼き。しっとりとした一枚の生地が包んでいるのは、北海道十勝産小豆を使ったやわらかな甘みのつぶ餡です。姿かたちとお味が調和した上品などら焼きは人気商品のため、お買い求めの際は予約をおすすめします。

 【東銀座】 路地裏から見つめる東京の今むかし
「木挽町よしや」

どら焼き 140円(5個より)

以前にも紹介された通り、木挽町よしやでは焼印をカスタムオーダーすることにより、企業のロゴなどをあしらったオリジナルのどら焼きを作ることができます。贈り物として幅広い業界から引き合いがあり、保管している焼印の数は実に6,000個にも上るそうです。

スーパーエグゼクティブ系特派員yaz氏が世界に一つだけの焼印を製作したときのレポートはこちらです。
木挽町『よしや』の「マイどら焼き」はいかが?(2020年7月)

 【東銀座】 路地裏から見つめる東京の今むかし
「木挽町よしや」

お小さくてかわいらしい、奥ゆかしいひと品です。

木挽町よしやの創業は大正11年(1922)。来年は100周年ですね。もし、アニバーサリーどら焼きが発売されるとしたら、それは百年に一度のどら焼きになりますね。※勝手を申して恐縮です。

木挽町よしやが創業した頃の東京

大正12年(1923)9月1日11時58分、関東地方南部を激しい揺れが襲いました。炊事をする時間帯だったことと、台風が近づいていたことが重なり、密集した木造家屋から火の手が上がると強い風がまたたく間にそれを大きくしていきました。関東大震災です。

未曾有の大災害となった関東大震災の実態を記録した映像を視聴できるウェブサイトが今年の9月1日に開設されました。このサイトでは震災発生から百年の節目を迎える2023年9月1日までに、国立映画アーカイブが所蔵する震災関連のすべての作品を順次公開していく予定です。


関東大震災映像デジタルアーカイブ|Films of the Great Kanto Earthquake of 1923

国立映画アーカイブは映画の保存・研究・公開を通して、映画文化の振興をはかる日本で唯一の国立映画専門機関です。図書室、展示室を併設した上映ホールが京橋三丁目にあるので、ご存じの方も多いことと思います。

今回公開された『關東大震大火實況(かんとうたいしんたいかじっきょう)では現在の中央区に関連するものとして、のちに南高橋に再利用される旧両国橋、前年にモダンに生まれ変わったばかりだった京橋の親柱、激震を耐え抜くも猛火によって力尽きた鉄骨構造の丸善本社、内部のほとんどを焼失しながら躯体の倒壊を免れた日本橋三越本店などの姿を確認することができます。

当時、こうした記録映画が全国で上映されると、遠方の被災状況を知った人びとの中に助け合いの意識が高まっていったそうです。

 【東銀座】 路地裏から見つめる東京の今むかし
「木挽町よしや」

京橋第一相互ビルヂング樓上より見た日本橋及神田方面の惨状」(關東震災畫報 第三輯 四、五/大阪毎日新聞社
Desolation of Nihonbashi and Kanda seen from the roof of Dai-ichi Sogo Building, Kyobashi.


これが木挽町よしや創業の翌年の東京です。ここからの百年を思うとき、いま私たちが暮らしている街や社会は、先人たちが何度も苦難を乗り越えながらつくり上げてきた尊い遺産にほかならないという気持ちがこみ上げます。

三代目はアイデアマン「銀座もの・ひと繋ぎプロジェクト」

激動の東京銀座を百年生き抜いてきた木挽町よしやの次の百年の幕開けを担うのは三代目、斉藤大地さん。軽食も提供する甘味処、甘味よしやの看板ボーイでもあります。

斉藤さんは昨年4月、新型コロナウイルス感染拡大のあおりを受けて輝きを失いつつあった銀座の街で何かできることはないかと考え、ある呼びかけをしました。それはリレー形式で物々交換をして、その様子をSNSで紹介するというもの。

ほどなくしてこの物々交換は銀座もの繋ぎプロジェクトと名付けられ、さまざまなお店や企業が参加し、地域のつながりを深めていきました。その結果、あらためて銀座という街の魅力看板商品を広く伝えることになりました。今では地域の枠を飛び越えてもの繋ぎプロジェクトの輪は鎌倉浅草へと波及しています。もちろん、いずれのもの繋ぎ木挽町よしやどら焼きから始まりました。

そして銀座もの繋ぎプロジェクトは今年、「ものからひとへ、想いを繋ぐ」をテーマに銀座ひと繋ぎプロジェクトとなって、銀座にゆかりのある人びとの愛情あふれるメッセージを日々発信しています。


今月は待望の日本橋もの繋ぎプロジェクトがスタートしました。この特派員ブログでもおなじみの山本海苔店さん、日本橋弁松総本店さんがTwitter版ティーザー広告(その①その②その③)に登場しました。

これからも木挽町よしやどら焼きと、三代目が手がけるプロジェクトから目が離せませんね。

店舗情報

店舗情報 【東銀座】 路地裏から見つめる東京の今むかし
「木挽町よしや」


木挽町よしや

中央区銀座3-12-9
03-3541-9405
隣に甘味よしやがあります。

東京メトロ日比谷線・都営浅草線 東銀座駅
日曜・祝日定休(土曜不定休)

どら焼きは予約注文の際に季節の焼印や「もの繋ぎどら焼き」をリクエストすることができます。

銀座もの・ひと繋ぎプロジェクト https://monotsunagi.jp/