よこやん

浮世絵を買いに行こう その①

佃在住「よこやん」です。
先日、東京国立博物館で開催されていた蔦重特別展に行き、黄表紙やら浮世絵やら堪能してきました。いい展覧会でした。
そしてそのグッズ売り場で衝撃の発見が。

今でも浮世絵って新品で買えるんですね!
しかも1枚2万円前後から…

厳密には江戸時代の浮世絵の忠実な復刻版なんですが、オリジナルをベースに版木を起こし、当時とほぼ同じ染料・顔料を用い、同じ手法で現代の摺師の方々が刷ったものです。

「こ、この値段なら買える、、、、」
しかもこんなに綺麗な状態の浮世絵が

アニメ、漫画、グラフィックと平面好きな私にとって、浮世絵は憧れのアイテムですよ。
しかも江戸期の有名どころはほぼほぼ復刻済み。つまりは好きな浮世絵選び放題。
グッズ売り場で実際に浮世絵を手にとって、上から下から(舐めるように)見る私。

待て待て、ここで慌てて買うな。落ち着け私。

聞けば出店されていたアダチ版画さんはショールームをお持ちとのこと。日を改めて、いざ出陣です。

佃の浮世絵、揃い踏み
展覧会でも実現しない贅沢

佃の浮世絵、揃い踏み
展覧会でも実現しない贅沢 浮世絵を買いに行こう その①

アダチ版画さんのご厚意で、たくさんの浮世絵を拝見させていただきました。
まずは佃の浮世絵をずらりと。すごい。こんな絵面みたことがありません。

ああどうしよう。どれにしよう。
佃に限ってもこんなに浮世絵があるとは。

冨嶽三十六景《武陽佃島》葛飾北斎
天保元−三年(1830-32)頃

冨嶽三十六景《武陽佃島》葛飾北斎
天保元−三年(1830-32)頃 浮世絵を買いに行こう その①

巨匠・北斎の代表作「富嶽三十六景」から。
こちらは初期の摺りで、空も海も藍の濃淡だけで表現された美しい藍摺り(あいずり)です。実物も非常に綺麗でした。
手前の船の積み荷を富士の形と相似させ、目線をひく仕掛けにしているそうです。
真ん中手前の木でモコモコしている島が石川島、その右奥に家々の連なる佃島が見えますね。

浮世絵は刷り増し時に出来上がりを変えることがあり、この絵も後の摺りでは富士の背景が夕日に染まるアレンジになり、雲も少なくなっています。

東都名所・佃嶋初郭公 歌川広重
天保2年(1831)頃

東都名所・佃嶋初郭公 歌川広重
天保2年(1831)頃 浮世絵を買いに行こう その①

「東都名所」は広重最初の風景画シリーズで、全10作のうち1枚が佃島です。
郭公はホトトギス、初郭公は初夏・夏の訪れの意のようです。真ん中に飛んでいる鳥がそうかな?
北斎「冨嶽三十六景」とほぼ同じ頃に出版され、広重はこのあと『東海道五十三次』を描いていきます。

名所江戸百景・佃しま住吉の祭 歌川広重
安政4年(1857)

名所江戸百景・佃しま住吉の祭 歌川広重
安政4年(1857) 浮世絵を買いに行こう その①

住吉神社例祭(佃祭)は毎年8月。この幟は3年に一度の本祭りで今も立てられ、2023年の本祭ではなんと6本も。大迫力だったそうです。(詳しくはGPPさんの記事をどうぞ)
この絵では、遠くに神輿、手前に幟を置く大胆な構図がフォトグラファーのようで、私は大好きです。

ぜひ幟の拡大を見てください

 浮世絵を買いに行こう その①

摺りで凹凸をつけ、色を使わずに幟の生地が表現されてました。粋ですねえ。

名所江戸百景・永代橋佃島 歌川広重
安政4年(1857)

名所江戸百景・永代橋佃島 歌川広重
安政4年(1857) 浮世絵を買いに行こう その①

夜景の浮世絵もいいです。
佃島の漁民は毎年11月から3月、寒空の下で篝火をたいて白魚を寄せて獲り、将軍家に献上していました。篝火がゆらゆら水面にうつる光景は、江戸の風物詩だったようです。
白魚は家康の大好物、透けて見える脳の部分が徳川家紋「三つ葉葵」に似て将軍家は代々珍重とか。

冨士三十六景・東都佃沖 歌川広重
安政6年(1859)

冨士三十六景・東都佃沖 歌川広重
安政6年(1859) 浮世絵を買いに行こう その①

冨士三十六景の版下絵は1858年4月に完成も、その後に広重が急逝。発売は翌年6月となり、結果的に彼の最後の作品集になりました。
絵はおそらく佃島の南側からの景色で島は葦原の状態、左手に富士山、右手に本願寺の屋根が見えます。

 広重(初代)は冨士三十六景を2回出しており、生前に出した「不二三十六景」にも「東都永代橋佃島」という作品がありました。不勉強でアダチ版画さん取材後にその存在を知り拝見できず。残念。

写楽も江戸美人ギャルも見たいし欲しい

見せていただいたのは風景画だけではありません。
喜多川歌麿や東洲斎写楽の作品もありますが、量が多くなりましたので次回に続けます。

買いに行くと言いながら、どの浮世絵にするか私は本当に決められるのでしょうか…
(続く)

 浮世絵を買いに行こう その①

アダチ版画 目白ショールーム

東京都新宿区下落合3-13-17
TEL:03-3951-2681
営業時間:
平日 10:00-18:00 (土 17:00)
(日月祝休)

作品によっては在庫がない、または復刻作業待ちの場合もあるそうです。
また現代浮世絵の販売ほか、浮世絵技術者の育成も手がけられています。そのお話も次回にすこし。

 浮世絵を買いに行こう その①

 中央区には、明治期からの浮世絵版元で「新版画」でも有名な渡邊木版さんがあり、こちらでも復刻版を作られ販売されています。
江戸期に刷られた浮世絵(オリジナル)も扱われており購入可能です。

渡邊木版美術画舗

東京都中央区銀座8-6-19
TEL:03-3571-4684
営業時間:
平日 11:00-18:30
祝 11:00-17:00
(日休)

店内は木版画関連の展示も多数あり、まちかど展示館にもなっています
お店に伺った際、ご主人(3代目渡邊さん)の銀座話がとても面白かったのですが、いつか記事にできたらいいなぁ