江戸の風吹くー芝居小屋「日本橋座」開催
令和7年10月26日(日)、芝居小屋「日本橋座」が盛大に開催されました。
今回が初めてとなる「日本橋座」の公演の模様をお伝えします。
なお、今回開催された芝居小屋「日本橋座」につきましては、私の過去ブログや10月8日付のissa123さんの特派員ブログを参照してください。
また、公演中は写真撮影ができなかったため、出演者の皆さんの画像は、「日本橋座」のサイトでご確認ください。
過去ブログ
「この秋、芝居小屋「日本橋座」で江戸体験 令和7年10月26日(日) 芝居小屋の熱気を十思スクエアで!」
https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6222
「日本橋座」サイト
まずは整理券
今回の「日本橋座」公演は、和楽器演奏と古典芸能「連獅子」の二部構成で、十思スクエアに設置された舞台前の会場に入るためには整理券が必要です。
ホームページで「整理券は11時から配布」との告知を確認し、天候を気にしながら少し早めの10時頃に十思公園へ向かいました。すでに数十名の方が列を作っており、最後尾は「時の鐘」付近。30分もすると、その列は公園の外、「大安楽寺」付近まで伸びるほどの盛況ぶりでした。
時折小雨が降る中、最終的には約800枚の整理券が配布されたとのこと。今回の「日本橋座」公演への関心の高さが感じられました。
モニター鑑賞も可能
なお、整理券がなくてもモニターで公演を鑑賞できるように、「時の鐘」付近に観覧エリアも設置されていました。
第一部 和洋楽器演奏「白衣天人」
12時を少し回ったところで、入場が開始されました。会場に足を踏み入れると、色鮮やかな松羽目の舞台が出迎えてくれ、その美しさに、これから始まる公演への期待がぐっと高まります。
13時になると、鳥羽屋三右衛門さんと、まばゆい白の衣装に身を包んだ「白衣天人」の5人が登場。その瞬間、舞台は一気に華やぎ、会場の空気がふわっと明るくなったように感じました。鳥羽屋さんのご挨拶に続いて、「白衣天人」による演奏がスタート。
和楽器のみで奏でられる「三番叟」や「俄獅子」から始まり、ピアノが加わった「滝流し(勧進帳より)」へと展開。さらに、ジャズのエッセンスを取り入れた「お江戸日本橋」や「お祭りマンボ」をはじめ、馴染みのある楽曲が次々と披露され、和楽と洋楽が見事に融合した新鮮な響きが会場を包み込みました。
印象的だったのが、和楽器オーケストラのための楽曲「秋の一日」。どんぐりが落ちる音、秋祭りの賑わい——そんな懐かしい季節の情景が、和楽器とピアノの繊細な旋律によって見事に描き出され、まるで秋の風景が目の前に広がるような感覚に。音だけでここまで情景を感じられるとは…と、改めて和楽器の表現力に驚かされました。
終盤には、「ベアーズウインドオーケストラ」の皆さんがサプライズで加わり、和楽器、ピアノ、管楽器が一体となった壮大なアンサンブルが響き渡り、深い余韻を残しながら、第一部の幕が閉じました。どの楽曲も新鮮で、音楽の力、そしてジャンルを越えた融合の楽しさ、美しさを存分に味わうことができました。
第二部 古典芸能「連獅子」
休憩をはさんで14時から第二部「連獅子」です。
黒紋付きに袴姿の「長唄連中」が舞台に上がると、会場の空気が一気に張りつめました。「囃子方」も舞台袖の上手に控え、準備は万端。
万雷の拍手とともに登場したのは、中村芝翫さんと中村橋三郎さん。鳥羽屋三右衛門さんらの長唄に、獅子頭を手にしたお二人が、手獅子の毛と衣を巧みに操りながら舞う姿は、まさに親子の獅子そのもの。「獅子の子落とし」の場面では、親子の情愛と修行の厳しさが伝わり、静かな舞台に込められた深い物語性が感じられました。
後半は前半と打って変わり、顔には隈取(くまどり)が施され、豪華な獅子の衣裳をまとった芝翫さんと橋三郎さんが、紅白の長い毛の獅子頭を付けて力強く舞います。メイク・衣裳・演技のすべてが前半とは劇的に変化し、獅子の力強さと舞の華やかさに圧倒されました。
前半と後半の幕間には鳥羽屋三右衛門さんによる見どころの説明や解説などもあり、「連獅子」は、私のように歌舞伎にあまりなじみがない者でも、伝統と芸の力を存分に感じられる素晴らしい演目でした。舞台の余韻に浸りながら、伝統芸能の奥深さに魅了されたひとときでした。
芝居小屋で感じた江戸の風情
舞台と観覧席の距離が近い芝居小屋では、役者の息遣いや「連獅子」のクライマックス「毛振り」の風までもが肌に届くような臨場感があり、芝居小屋ならではの醍醐味だと、改めて実感します。
さらに、様々な掛け声や、ふと静寂が戻ったときに聞こえる子どもの泣き声などの生活音もまた、芝居小屋の雰囲気に彩りを添えていました。江戸文化に思いを馳せ、心豊かな時間を過ごすことができました。
舞台の熱気と人々の息遣いが交錯する芝居小屋で、江戸の風情と芸の力に触れた一日でした。
最後に
雨が降ったりやんだりの一日でしたが、今回は屋外での公演ということもあり、最大の懸念は雨対策でした。ご覧のとおり、舞台や観覧席には仮設の屋根が設けられており、安心して観覧することができました。
鳥羽屋三右衛門さんが「関係者の皆さんが夜中に準備してくださった」とお話されていましたが、その言葉通り、細部にまで心配りの行き届いた運営には、ただただ頭が下がる思いです。
雨対策をはじめ、今回の芝居小屋「日本橋座」の準備・設営に尽力されたすべての関係者の方々に感謝いたします。
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