勝三郎

東京2025デフリンピック マラソン
都心の元高速道路を駆け抜ける

デフリンピックとは?

デフリンピックは、聴覚に障害のあるアスリートが参加する国際スポーツ大会です。

パラリンピックとは別に開催され、1924年から続く長い歴史を持っています。

4年に一度行われ、今回は1115日から26日まで東京で開催されました。

都心・高速道路が舞台のマラソン

都心・高速道路が舞台のマラソン 東京2025デフリンピック マラソン
都心の元高速道路を駆け抜ける

大会の終盤を飾るマラソン競技は、1125日に行われました。

舞台は、銀座を囲む形で走る東京高速道路、通称KK線と首都高速八重洲線の一部です。1966年に開通した全長約2kmの自動車専用道路は、20254月に廃止され、廃道後は人が歩き楽しめる公共空間に生まれ変わる予定です。その道路を、ランナーが駆け抜けるという特別な舞台となりました。

銀座の高層ビル群を背景に、時折新幹線が真横を走る景色は、都市とスポーツが交錯する光景であり、国内外の選手や観客にも都市の魅力を間近に感じてもらえる機会です。

競技ルールと聴覚障害への配慮

このコースでは、1周目が2.195km29周が5km×8周で合計42.195km。自動車専用道路だっただけにカーブでは傾斜する道路を走らなければなりません。

また、デフリンピックのスタート合図はピストルではなく、旗や光による「視覚シグナル」で行われます。審判の指示や警告もボードやジェスチャーで伝えられ、選手は視覚に頼りながら自己判断でペースを刻みます。

世界レベルの走力を持つトップの選手たちは2時間20分台で走るなど、一般のエリートランナーと遜色ないパフォーマンスを発揮します。

青山拓朗選手の挑戦

青山拓朗選手の挑戦 東京2025デフリンピック マラソン
都心の元高速道路を駆け抜ける

私が注目したのは、台東区出身で、台東区役所職員の青山拓朗選手。10000mやマラソンを主戦場とする長距離ランナーです。1996年生まれの青山選手は、デフ陸上で数々の実績を持ち、国内外から注目されています。

今回の東京デフリンピックでは、日本勢トップの7位でゴールしました。(2時間324)

1位はスエーデンのオットー・キングステッド選手で2時間1610(デフリンピック新記録)でした。

女子の1位は、メキシコのルアデス・ポンセ・ジュアレス選手で2時間4930秒、日本人1位は安本真紀子選手の3時間1910秒でした。

沿道の熱い応援

沿道の熱い応援 東京2025デフリンピック マラソン
都心の元高速道路を駆け抜ける

沿道には多くの観客が詰めかけ、肌寒い少雨の中、手話やプラカード、視覚的な拍手で選手たちを応援しました。

青山選手も苦悶の表情を浮かべながらも、力強くゴールラインを越えました。

新聞社のインタビューでは「高速道路を走るのは、最初で最後になると思う。貴重な経験で幸せだった。新幹線を見る余裕はなかった」と笑いつつ、「周回コースだったので、以前陸上教室に参加してくれた小学生たちやデフ陸上の選手団のみんなの応援がたくさん見えてうれしかった」と語りました。

走ることで見えきた、今後のまちづくり

高架を走る光景は、これからのまちづくりを考えるヒントになったのではないでしょうか。スポーツのフィールドにも活用できる場所のイメージが、次の都市計画につながることを期待したいと思います。

 東京2025デフリンピック マラソン
都心の元高速道路を駆け抜ける