小江戸板橋

芝居の華咲く 木挽町

※ 映画館前の絵看板

 

エンドロールが流れる。

主題曲が重なる。

椎名林檎。

『人生は夢だらけ』

ん、ん、ん。この曲をぶつけてきたか。

「喉元過ぎれば ほら 酸いも甘いもどっちもおいしいと これが人生 私の人生 鱈腹味わいたい ~ 」

 

椎名林檎といえば、トータス松本とのデュエット曲、「目抜き通り」が思い浮かぶ。

GINZA SIX のオープニングテーマ曲として使われていた。

木挽町つながりも、成り立つのか。

 

 芝居の華咲く 木挽町

※ 直木賞・芥川賞の選考会場として知られる築地の料亭、新喜楽。

 

第169回直木賞受賞、永井紗耶子の「木挽町のあだ討ち」

2023年7月19日だった。

木挽町が舞台の小説ならばと心を動かされ、本を手にした。

登場人物の語りが重なり合う芝居の台詞のような原作から、早晩、映画化もされるだろうと思った。

「木挽町の名残を探して」

 

 芝居の華咲く 木挽町

 

2025年4月3日

歌舞伎座の「四月大歌舞伎」の演目をみて、驚いた。

なにっ、「木挽町のあだ討ち」

映画化より先に、歌舞伎が来た。

「歌舞伎の演目に? 成った!」

 

 芝居の華咲く 木挽町

※ 四月大歌舞伎のリーフレット

 

やってくれるじゃねえか。

芝居の舞台は、江戸三座と謳われた「森田座」だ。

主人公に絡む主要な人物たちは、木戸芸者、殺陣師、衣装方、小道具方、そして座の立作家。

とあっちゃ、映画なんぞに先を越されるわけには、いきますめい。

初日の幕は開いた。

普段は客の目に触れない、芝居を支える人たちの姿を、篤く演じていた。

 

 芝居の華咲く 木挽町

 

歌舞伎座の千穐楽。

きっとこの時、歌舞伎稲荷神社の御朱印、初日限定版の黄色に合わせ、千穐楽限定版の橙色(だいだいいろ)も揃えたくて、東銀座に来たのだった。

 

 芝居の華咲く 木挽町

※ 映画のパンフレット

 

前回、映画館に足を運び、大画面を楽しんだのは「国宝」だった。

歌舞伎という共通点があるせいか、外伝を観るようにスッと入り込めた。

次々に繰り広げられる、ご存じ演目の名場面の数々。

この展開、たまらない。

表舞台もさることながら、芝居小屋の裏方も覗き見るようで、ワクワクが高まる。

 

 芝居の華咲く 木挽町

※ 蜊河岸(あさりがし)の案内板

 

殺陣師の相良与三郎は、幕末に「江戸三大道場」と呼ばれた桃井道場の師範代を務めたという。

観光特派員の浅はかな習性。

つい、「あっ、その場所わかります。」

「京橋公園の中に、蜊河岸の案内板が設置されています。その近くに桃井道場(士学館)はありました。」

ふぅ。なんと野暮な思いが湧いてしまうのか。

 

 芝居の華咲く 木挽町

 

映画を観ていると、既視感というか、過去の経験であったような気分になることがある。

あの偽首回収作戦の場面。

突如強くなった「仮名手本忠臣蔵の矢間重太郎」

槍の使い手で、炭小屋に隠れた吉良上野介に一番槍を付けたとされる人物。

私は、「忠臣蔵の間十次郎」の芝居をしたことがあった。殺陣は槍で。

役名が同じというか、近かったことが少し嬉しく、心の中で応援してしまった。

「よっ、謙さん。息切れてるよ!」

 

 芝居の華咲く 木挽町

※ 映画のオリジナルグッズ。推し活気分でそろえてみた。

 

映像に映し出されるダイナミックさは、映画ならではの魅力だろう。

撮影所内に、森田座をまるごと、周辺の建物も一式作り上げて撮影に及んだという。

大道具方、小道具方の思い入れの集大成。

そのうえに、美術方の生み出した鮮やかな色彩が踊る。

蠟燭の灯で照明が輝く。音響が芝居の華やかさを盛り上げる。

カメラワークが臨場感を高めていく。

映画は、かっこいい人を、さらにかっこよく描き出していく。

 

 芝居の華咲く 木挽町

 

原作と、それをベースにした作品との違いについて、よく議論になる。

本。舞台。映像。それぞれが独立したエンターテイメントだ。

本歌取りから新しい作品が生まれる。

私は、それぞれをそのまま楽しみたい。

原作の感動を味わいたければ、もう一度本を読み返してみればいい。

 

妻に、読書を勧めることがある。

「この本読んでみな。面白いから。」

「映画になっているなら、映画を観ようかな。

本は、読むと眠くなるから、今は読まなくていい。」

本を読むと眠くなるという点に関して、妻は私の母とよく似ている。