「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑤」
~日本橋瀬戸物町(福徳神社):鳥山検校~

元花魁の「瀬川」を身請けした鳥山検校の屋敷は「日本橋瀬戸物町」にあり、「青楼美人合姿鏡」の版元、山崎金兵衛の本屋があった「日本橋十軒店」のご近所です。瀬川は、自分の姿が描かれた「青楼美人合姿鏡」を、山崎金兵衛の店先で眺めていたのかもしれません。
“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜”
第13話「お江戸揺るがす座頭金」、第14話「蔦重瀬川夫婦道中」
3月30日(日)放映の第13話、4月6日 (日)放映の第14話では、幕府による「当道座(とうどうざ)」取り締まりのため、瀬以(=蔦重の幼馴染の花魁「瀬川」、演:小芝風花)と、瀬以を身請けした鳥山検校(演:市原隼人)が捕らえられました。
タイトル画像は、戯作者の田螺金魚(たにしきんぎょ)作の「契情買(けいせいかい)虎ノ巻」(出典:京都大学付属図書館)で、瀬川が鳥山検校に身請けされたエピソードをもとに作られた戯作です。五代目瀬川の名がいまも伝わっている理由の一つが、この戯作の存在があったからだといわれています。ドラマ第14話の中でも、蔦重がこの本を瀬川に渡し、想いを伝えるシーンが描かれていましたね。
鳥山検校の屋敷「日本橋瀬戸物町」

ドラマにも描かれていた、身請け後の瀬以(瀬川)が住んでいた鳥山検校の屋敷は、「日本橋瀬戸物町」にありました。
鳥山検校は、高利貸しに加え、吉原での豪遊や瀬川の身請けについても糾弾され、全財産没収のうえ、江戸近隣から追放となりました。このとき鳥山検校が没収された財産は、日本橋瀬戸物町の家屋敷のほか、10万両(100億円程度)と貸付金1万5000両(15億円程度)だったといわれています。
画像は、江戸時代の日本橋瀬戸物町が描かれた「江戸切絵図」(出典:国立国会図書館)です。赤マルが「瀬戸物町」で、上に「日本橋」、右に「常磐橋」の表記があります。

左の画像は、現在の位置関係を示しています(出典:日本橋案内板)。鳥山検校の屋敷は「日本橋瀬戸物町」(現在の「コレド室町1~3」界隈)にあり、以前ご紹介させて頂きました「十軒店」のご近所です。
「十軒店」には、五代目花魁「瀬川」が描かれた唯一の絵本「青楼美人合姿鏡」を、蔦重と共同出版した山崎金兵衛の本屋がありました。
瀬以(瀬川)は、トップページに自分の姿が描かれている「青楼美人合姿鏡」を、山崎金兵衛の店先で眺めていたのかもしれません。
「十軒店」は、以下ブログ(↓)をご覧ください。
福徳神社(芽吹稲荷)
「浜ちゃん」は、鳥山検校とのご縁を探して、かつての「日本橋瀬戸物町」界隈を細い路地も含め全て巡りましたが、残念ながら痕跡は見つけられませんでした。
その代わり、鳥山検校屋敷のご近所に当時からありました「福徳神社」が、今でもありますので、ご紹介させて頂きます。
福徳神社は「芽吹稲荷」ともよばれ、貞観年間(859-876年)には、コレド室町1&2横の現在の場所に鎮座しており、徳川家康も度々参詣したといわれています。また、二代将軍・徳川秀忠が、慶長19年(1614)正月に参詣した際に、椚(くぬぎ)の皮付きの鳥居に春の若芽が萌え出でたのを見て、「芽吹稲荷」の別名を付けました。日本橋のビル群の中にあるこの神社には、今でも多数の参拝者が訪れています。
瀬川は、吉原の「九郎助稲荷(くろすけいなり)」(語り:綾瀬はるか)を度々訪れていましたので、山崎金兵衛の店先で「青楼美人合姿鏡」を眺めた後、蔦重と一緒に参拝していた「九郎助稲荷」を思い出しながら、福徳神社(芽吹稲荷)のお稲荷さんに参拝していたと想像するのも面白いかもしれませんね。
【過去ブログ、参考資料・出典】
●過去ブログ:
① 伝馬町牢屋敷:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5849
②浜離宮恩賜庭園:徳川将軍家の鷹狩場 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5856
③ 長崎屋、石町時の鐘:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5861
④ 日本橋 拾軒店:瀬川「青楼美人合姿鏡」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5907
●参考資料・出典(ホームページ含む):
歩いてわかる中央区ものしり百科、中央区、国立国会図書館、東京都立図書館、国立文化財機構、東京国立博物館、NHK、プレジデント、サライ、ステラNet、東京都公園協会、浜離宮恩賜庭園、東京都、郵政博物館、「十軒店跡」案内板、福徳神社、京都大学
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