べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 異聞 38
~ 鸚鵡返文武二道 ~
リモートで、愛する中央区をナビゲートします、rosemary sea です。
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」第36話、松平定信さん、蔦重の出した本に激怒、3つの本に絶版を言い渡しましたね。「これはもはや謀反と同じである」と。
そして春町さん切腹・・・。春町としては「豆腐の角に頭をぶつけた」としましたが。
怖い怖い統制の嵐、いよいよこれからもっと重く暗くなります。辛いです。
東作さんまで鬼籍に入ってしまいました。
しかし、ここを克服するのが蔦重の真骨頂、描かない訳にはいきませんね。
36話に登場しました人物は、
シリーズ29蔦重、シリーズ25てい、シリーズ27つよ、シリーズ23喜多川歌麿、シリーズ⑳恋川春町、シリーズ28朋誠堂喜三二、シリーズ⑮平秩東作、シリーズ21大田南畝、シリーズ③北尾重政、シリーズ⑬北尾政演(山東京伝)、シリーズ32唐来三和、シリーズ⑫勝川春草、そしてシリーズ⑤須原屋市兵衛、シリーズ⑧鶴屋喜右衛門。
今回は黄表紙「鸚鵡返文武二道(おうむがえしぶんぶのふたみち)」を採り上げます。人物でなく書籍です。
今回絶版となった3冊の中の1冊です。絶版のきっかけとなった1冊です。
なお、冒頭画像は東日本橋2-6-8、大本山川崎大師東京別院 薬研堀不動院の梵鐘(ぼんしょう)です。
それでは・・・
黄表紙につきまして・・・
黄表紙は「うがち」という方法を有力な武器とする。
「うがち」とは、誰も気付いていないような新事実、まだ見落としていたような事実を鋭く指摘して見せることである。
黄表紙が視覚に訴える絵本様式のものであることが「うがち」をより有効にしている。
1年単位で新版が発行されるこのメディアは時代に密着した内容を盛り込むに最適の器でもある。
黄表紙は当時最先端の流行風俗を取り入れる。
服装、髪型、ナウいスポット情報、遊女や芸人の動静等々を逸早く作に盛り込もうと作者たちは競うのである。
浅間山の大噴火、飢饉、田沼政権の崩壊、江戸市中打ち壊し、松平定信の改革政治と、世の中が目まぐるしく動いていた時期、その事情通ぶりを誇示すべくこれら世相の混乱をうがとうとするのは彼らにとって至極当然のなりゆきであった。
黄表紙「鸚鵡返文武二道」は・・・
画像は冒頭画像と同じく薬研堀不動院の常香炉(じょうこうろ)です。
寛政元年(1789年)正月刊。恋川春町作、北尾政美画。
前年刊の「文武二道万石通(ぶんぶにどうまんごくどおし)【※】」を受けての作。
※ 文武二道万石通・・・
天明8年(1788年)正月刊。
朋誠堂喜三二作、喜多川行麿(ゆきまろ)画。
寛政改革下の世相の混乱と田沼一派の失脚劇に取材した黄表紙である。
喜三二は、佐竹藩【※※】の思惑もあってか、以後黄表紙に筆を執らなくなる。
※※ 朋誠堂喜三二はそもそも佐竹藩(久保田藩)の藩士・平沢常富であり、以後は黄表紙から離れ、狂歌に没頭したといわれる。
「鸚鵡返・・・」は「・・・万石通」の好調な売れ行きを受け、それを追うように企画・刊行されたようだ。
「鸚鵡返」とは、武士の教本として文武二道と倹約を奨励した定信著「鸚鵡言(おうむのことば:「鸚鵡之詞」と書くことも)」を風刺していることに他ならない。
松平定信の治世下の倹約ブーム、文武ブームを茶化す。
この黄表紙は大いに評判を呼び、3月頃まで江戸市中に出回った。
ただ、これが定信の逆鱗に触れてしまった。
春町は本作の件で出頭を命ぜられたものの、病気を理由に出頭せず、同年7月に没する。
自殺の噂も流れた。享年46歳。
挿絵を描いた北尾政美(このシリーズ34掲載)も、この仕事を機に黄表紙の世界から離れていくことになる。
彼の場合は剃髪して「鍬形渓斎(「べらぼう・・・」では『蕙斎』)」を名乗り、むしろ体制派が好む絵を描くようになった。
やがて津山藩のお抱え絵師となり、幕府お抱えの奥絵師だった狩野派にも蔵することになる。
のちに葛飾北斎と並び称されるほどの人気絵師となる鍬形渓斎だが、その作品を多く用いたのは、幕政から手を引き、文化事業に専念した引退後の松平定信であった。
すでにそのころは蔦重も亡くなっていたが、改革の逆風を転機にした人間もいたことは、江戸の文化人の逞しさを感じさせる。
※ 恋川春町はシリーズ⑳、朋誠堂喜三二はシリーズ28にて掲載。
参考文献 別冊太陽 日本のこころ89 「蔦屋重三郎の仕事」 平凡社 刊
「江戸の戯作絵本②」 小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博 編
「Art of 蔦重 蔦屋重三郎 仕事の軌跡」 車浮代 著 笠間書院 刊
「べらぼう・・・」での黄表紙「鸚鵡返文武二道」は・・・
画像は東日本橋2丁目 ー 台東区柳橋2丁目、柳橋欄干の玉かんざしレリーフ(浮彫り)の赤です。
レリーフにフォーカスして撮りました。
「鸚鵡返文武二道」は前回35話で登場しました。今回36話でもメインで紹介されました。
画像は前画像と同じく柳橋欄干の玉かんざし、こちらは青です。
今度は背景に焦点を合わせて撮りました。
・・・NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」、転機となった物事もつぶさに描いていきます。
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