祝 蔦重:結婚、日本橋進出!
「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑩」
~「大江戸問屋祭り」7/6(日)開催:鶴屋喜右衛門(演:風間俊介)~

史実でも、蔦重の店「耕書堂」の向かいに鶴屋喜右衛門の店があり、ドラマ第25話で蔦重が飛び込んだ川も「浜町堀」という実際にあった掘割でした。江戸時代、彼らの地本問屋の界隈は問屋街で、今月7月6日(日)に、現存している日本最大級の問屋街において「大江戸問屋祭り」が開催されます。
“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜”
第25話「灰の雨降る日本橋」
6月29日(日)放映の第25話では、蔦重が、浅間山の大噴火で被害を被った日本橋の「通油町(とおりあぶらちょう)」の灰の除去のために懸命に働き、てい(演:橋本愛)と鶴屋喜右衛門(つるやきえもん)(演:風間俊介)は心を打たれました。ていは蔦重からの結婚の申し出を受け入れ、また、鶴屋喜右衛門も、2人の婚儀の席に、お祝いの品として「新しい店ののれん」を持って現れ、日本橋の通油町は蔦重を歓迎する旨を伝えました。まさに、「灰降って地固まる」内容でした。
NHK大河ドラマファンの方であれば、ご存知だと思いますが、蔦重の妻ていを演じる「橋本愛」さんは、大河で主人公の妻役を二度演じており、今回が三度目になります。最初は「西郷どん」で西郷隆盛(吉之助)の妻・須賀を、そして、「浜ちゃん」が「中央区とのご縁」シリーズをお届けしている渋沢栄一翁の生涯を描く「青天を衝け」で妻・千代を、そして今回は、蔦重の妻・ていを演じています。最初の2作はどちらも良妻の役でしたが、今回のドラマでは、どのようなストーリーになるのか、楽しみですね。
鶴屋喜右衛門

画像は、江戸切絵図(出典:国立国会図書館デジタルコレクション)で、耕書堂のはす向かいに、鶴屋喜右衛門の店「仙鶴堂(せんかくどう)」がありました。彼らの店は、日本橋の「通油町」にあり、ドラマ第24話では、鶴屋喜右衛門が、通油町には釘屋と本屋しかないと語っていました。実際にこのエリアは、江戸時代には「打物問屋」といって釘鉄銅問屋の多い町で、金物の大店ばかりで商売ものんびりして朝も遅いことから、「朝顔の開くを知らぬ油町」などといわれていました。
また、耕書堂があった通油町のすぐ東には、「浜町堀」と呼ばれた、水運で利用するための南北に長い掘割があり、ここに「緑橋」という木造橋がかけられていました。ドラマ第25話の中で、灰を早急に処分するために、蔦重の提案でゲームをすることになり、最後に、灰が入った桶を両手に持って蔦重が川に飛び込むシーンがありました。蔦重が飛び込んだ川が「浜町堀」で、映像に映っていた橋が「緑橋」です。現在、このあたりは、ビル街になっていますが、甘酒横丁付近まで行くと、「浜町川緑道」があり、当時の掘割の名残を感じることができます。
蔦重は、鶴屋喜右衛門とライバル関係にありつつも、本屋仲間として協力もしていました。蔦重の人生で記録に残っている最初の旅は、天明8年(1788年)、日光東照宮と中禅寺湖詣でしたが、これは、山東京伝(演:古川雄大)と鶴屋喜右衛門と一緒の道中でした。現代でいう接待で、当時売れっ子だった山東京伝を、蔦重と鶴屋喜右衛門とで囲い込む目的があったと言われています。
タイトル画像は、「江戸名所図会」(出典:東京都立図書館)に描かれた鶴屋喜右衛門の店先の様子です。店頭で本を選んでいる客もいますので、小売りもやっていることが伺えますが、入り口の看板に掲げられている通り、メインの商売は同業相手の「問屋」です。
絵の右側に、○に村の紋をつけた大きな風呂敷包みを背負った男が店に入ろうとしています。これは、十返舎一九の代表作である滑稽本「東海道中膝栗毛」の版元だった村田屋次郎兵衛(演;松田洋治)の紋で、この男は、村田屋の商品を鶴屋に届け、鶴屋の商品を仕入れるのです。
ドラマ第25話の中で、天明3年(1783年)におきた浅間山の大噴火で、甚大な被害を受けた通油町の様子が流れていましたが、この時期、村田屋治郎兵衛は蔦重と同じ通油町に店を構えていました。ドラマの中で(一瞬なので見つけにくいかもしれませんが、放送開始から約16分後です)、村田屋治郎兵衛ののれん(○に村)、鶴屋喜右衛門ののれん(JALのような鶴のマーク)、そして、蔦重ののれん(○に丸(まだ、丸屋なので))が、放映されていました。さすが、NHKと森下佳子さんがタッグを組んだ大河ドラマ、蔦重と鶴屋喜右衛門の店の位置関係、蔦重が飛び込んだ掘割と橋、そして村田屋治郎兵衛ののれん、史実を踏まえながら細かい描写も丁寧に描かれていることに感嘆しています。
左端にも、黒い風呂敷包みを重そうに背負った男が、仕入れを終えて店をあとにする様子が描かれています。その左には、山形に「川(つ)」の紋が風呂敷に見えますので、鶴屋の男が店に戻ったところで、帳場にいる番頭風の男と言葉を交わしている様子が伺えます。
1日限りの問屋体験、「大江戸問屋祭り」7月6日(日)開催!

蔦重と鶴屋喜右衛門の書物問屋跡地のすぐそばに、日本橋横山町・馬喰町の問屋街があり、日本最大級の問屋街といわれています。江戸時代、横山町は、袋物、髪飾、白粉(おしろい)、紅など多種多様な品物を扱う小間物問屋街で、諸国の品物を広く扱っており、江戸市中はもとより地方からもこれを求めて顧客が集まる賑やかな街でした。そして、この小間物問屋は北隣の馬喰町にも広がり、現在の、日本橋横山町・馬喰町の問屋街になっています。
問屋街では、通常、小売りはしていませんので、一般の方は商品を購入することができません。しかしながら、問屋街にある「新道通り」を中心としたエリアでは、7月と12月の第1日曜日に限り、一般の方にも問屋で買い物を楽しんでもらおうと「大江戸問屋祭り」を開催しています。約400m続く新道通りには婦人服やタオル、服飾雑貨などの店舗が参加し、多くの人で賑わいます。
7月6日(日)に「大江戸問屋祭り」が開催されます。詳細は以下の公式ホームページ(↓)をご覧ください。
以下のブログ(↓)でご紹介させて頂きました通り、近隣には蔦重関連スポットが複数あります。蔦重関連スポットを巡るついでに、年に2回しかない「問屋体験」をするのもおススメです。「耕書堂」跡の説明版から、馬喰横山駅方面に歩いていくと、大通り(清洲橋通)に出ます。大通りの交差点で、左側を見ると「日東タオル」の黄色いビルがありますので、その横の通りがメイン会場となる「新道通り」です。以下のブログにマップを添付させて頂いておりますので、それを参考にしていただければ幸いです。
【過去ブログ、参考資料・出典】
●過去ブログ:
① 伝馬町牢屋敷:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5849
② 浜離宮恩賜庭園:徳川将軍家の鷹狩場 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5856
③ 長崎屋、石町時の鐘:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5861
④ 日本橋 拾軒店:瀬川「青楼美人合姿鏡」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5907
⑤ 日本橋瀬戸物町(福徳神社):鳥山検校 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5920
⑥ 狩野派:鳥山石燕、田沼意次、松平定信 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5987
⑦ 「耕書堂」(日本橋通油町):蔦屋重三郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5980
⑧ 熈代勝覧(きだいしょうらん):須原屋市兵衛(演:里見浩太朗) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5996
⑨ 「べらぼうフェスティバル in 日本橋」(7/4~7/6)と「べらぼう 蔦屋重三郎 ゆかりの地めぐり(マップ付)」 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6014
●参考資料・出典(ホームページ含む):
Central Tokyo for Tourism(東京中央区オフィシャル観光ガイド)、
歩いてわかる中央区ものしり百科、中央区、国立国会図書館、東京都立図書館、国立文化財機構、東京国立博物館、NHK、プレジデント、サライ、ステラNet、東京都公園協会、浜離宮恩賜庭園、東京都、郵政博物館、「十軒店跡」案内板、福徳神社、京都大学、二条城、メトロポリタン美術館、イチマス田源、蔦重通油町ギャラリー、十思スクエア蔦重ギャラリー、熈代勝覧
読んで歩いて日本橋-街と人のドラマ(慶應義塾大学出版会)、日本橋街並み商業史(慶應義塾大学出版会)、日本橋街並み繁昌史(慶應義塾大学出版会)、
本の江戸文化講義-蔦屋重三郎と本屋の時代-(KADOKAWA)、蔦屋重三郎と粋な男たち!-時代を生き抜く成功方法-(内外出版社)、蔦屋重三郎と田沼時代の謎(PHP研究所)、蔦屋重三郎と吉原-蔦重と不屈の男たち、そして吉原遊郭の真実-(朝日新聞出版)、蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人-歌麿にも写楽にも仕掛け人がいた!-(PHP研究所)、蔦屋重三郎の時代-狂歌・戯作・浮世絵の12人(KADOKAWA)、これ一冊でわかる!蔦屋重三郎と江戸文化(Gakken)、江戸の仕掛人 蔦屋重三郎(ウェッジ)、蔦屋重三郎(平凡社)、蔦屋重三郎 新版(平凡社)、蔦屋重三郎 江戸を編集した男(文藝春秋)、べらぼうに面白い蔦屋重三郎(興陽館)、蔦屋重三郎-江戸の反骨メディア王-(新潮社)、蔦屋重三郎-江戸芸術の演出者-(日本経済新聞社)、蔦屋重三郎と浮世絵-「歌麿美人」の謎を解く-(NHK出版)、蔦屋重三郎と江戸のアートがわかる本(河出書房新社)、蔦屋重三郎の仕事(平凡社)、Art of 蔦重-蔦屋重三郎 仕事の軌跡-(笠間書院)、蔦屋重三郎と江戸メディア史(星海社)、東京江戸地図本-TOKYOで「華のお江戸」を巡る-(ユニプラン)、吉原噺-蔦屋重三郎が生きた世界-(徳間書店)、居酒屋蔦重(オレンジページ)、もっと知りたい蔦屋重三郎-錦絵黄金時代の立役者-(東京美術)、江戸文化の仕掛け人 蔦屋重三郎と若き芸術家たち(玄光社)、すぐ読める!蔦屋重三郎と江戸の黄表紙(時事通信出版局)、江戸を照らせ-蔦屋重三郎の挑戦-(小峰書店)、蔦屋重三郎-江戸の出版プロデューサー-(講談社)、蔦屋重三郎-歌麿、写楽、北斎を仕掛けた江戸のカリスマ出版人-(集英社)、狩野派絵画史(吉川弘文館)、江戸名作画帖全集4探幽・守景・一蝶-狩野派-(駸々堂出版)、狩野派決定版(別冊太陽 日本のこころ131)(平凡社)、狩野派の絵画-特別展(東京国立博物館)、狩野派の絵画-特別展図録(東京国立博物館)、もっと知りたい狩野派-探幽と江戸狩野派(アート・ビギナーズ・コレクション)(東京美術)、浮世絵芸術(国際浮世絵学会)、日本妖怪考(森話社)、広益体 妖怪普及史(勉誠社)、今昔妖怪大鑑(パイインターナショナル)、妖怪あつめ(角川書店)、続・妖怪図鑑(図書刊行会)、江戸の本屋さん(平凡社)、江戸の本屋(上、下)(中公新書)