浜ちゃん

「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑪」
~日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美)~

べらぼう第23話では、日本橋の呉服屋、白木屋彦太郎が登場しました。その人物は、現在の「コレド日本橋」に店があった、江戸三大呉服店のひとつ「白木屋」の六代目でした。

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜” 
第23話「我こそは江戸一利者なり」

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜” 
第23話「我こそは江戸一利者なり」 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑪」
~日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美)~

615()放映の第23話では、江戸一の「利者(ききもの)」と呼ばれ勢いに乗っている蔦重のところへ、白木屋彦太郎(演:堀内正美)ら日本橋の呉服屋仲間がやってきました。白木屋は、蔦重のライバルである西村屋(演:西村まさ彦)が出した「雛形若菜(ひながたわかな)」が売れるように、吉原全体で協力するよう依頼してきました。日本橋に店がある西村屋の本は全国津々浦々に流れており、そこが決定的な違いだと指摘され、蔦重は、吉原の本屋でいることの限界(現実)を突きつけられました。

ドラマの中で白木屋が浮世絵を見比べていましたが、画像上段が西村屋の「雛形若菜」、下段が耕書堂(蔦重)の「青楼名君(せいろうめいくん)」です。ドラマの中で白木屋は、蔦重の「青楼名君」の絵の方が優れているかもしれない、と言っていました。

(画像出典:雛形若菜、ColBase  https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-1136?locale=ja

(画像出典:青楼名君、ColBase https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-2141?locale=ja

日本橋「白木屋」

日本橋「白木屋」 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑪」
~日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美)~

ドラマ第23話をご覧になられた方の中には、日本橋、呉服屋、白木屋、と聞いて、日本橋にあった「白木屋デパート」の前身だと、ピンとこられた方もいらっしゃると思います。白木屋呉服店は、デパート(白木屋)に転身を遂げ、昭和30年代の合併を経て東急百貨店日本橋店(平成11年閉店)となり、その跡地にコレド日本橋がオープンし、現在に至っています。

江戸の三大呉服店(越後屋・白木屋・大丸屋)のひとつであった白木屋は、寛文2年(1662年)に、近江国(現在の滋賀県)出身の大村彦太郎(白木屋の初代)が、日本橋の通二丁目に小間物商「白木屋」を開いたのが始まりです。その3年後には通一丁目に移転して店舗を拡大し、呉服なども取り扱うようになりました。ドラマの中で描かれていた白木屋彦太郎は、江戸出店から約120年後の当主ということになります。

白木屋の六代目は、先代の五代目が病身だったため、宝暦5年(1755年)、12歳の時に、白木屋の当主になりました。六代目は、寛政3年(1791年)、48歳で隠居するまで、白木屋の発展と繁栄をもたらし、この時代に白木屋は飛躍的な発展をとげました。

蔦重は、天明3年(1783年)9月、33歳のときに、日本橋通油町に「耕書堂」を出店しました。ドラマでは、その直前に、蔦重は白木屋と面談していた、との設定です。天明3年(1783年)は、白木屋六代目が40歳のときですので、ドラマの設定とぴったり一致します。また、ドラマの中の白木屋彦太郎は、相当なやり手との雰囲気を醸し出していましたが、この点も史実と一致しますね。

タイトル画像は、歌川国貞が描いた「白木屋」です(出典:東京都立図書館)。

画像は、「江戸之下町復元図」に描かれている、通一丁目にあった「白木屋」で、現在のコレド日本橋の場所に、寛文5年(1665年)からありました。

名水白木屋の井戸

名水白木屋の井戸 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑪」
~日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美)~

江戸初期に埋め立てられた日本橋周辺は、良水の確保に苦しんでいました。

そこで、白木屋二代目は、私財を投じ、正徳元年(1711年)から良質な水を求めて井戸職人による鑿井(さくせい)を進め、翌年には、将軍家や諸大名に献上するほどの清水が湧き出しました。その際、観世音菩薩の尊像が出現し、間もなく地下水が自噴したといわれています。付近の住民にも使われたこの水の評判は江戸中に知れわたり、「白木名水(霊水)」として評判になりました。

白木屋の井戸は現存していませんが、コレド日本橋の敷地内に、「名水白木屋の井戸」の石碑(画像)があります。なお、コレド日本橋の横の、「ふとんの西川」があった一帯のエリアは再開発工事中のため、現在は石碑を見ることはできませんが、20263月末に竣工予定ですので、それ以降は、石碑を見ることができるようになる予定です。

【過去ブログ、参考資料・出典】

●過去ブログ:

      伝馬町牢屋敷:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5849

      浜離宮恩賜庭園:徳川将軍家の鷹狩場 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5856

      長崎屋、石町時の鐘:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5861

      日本橋 拾軒店:瀬川「青楼美人合姿鏡」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5907

      日本橋瀬戸物町(福徳神社):鳥山検校 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5920

      狩野派:鳥山石燕、田沼意次、松平定信 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5987

      「耕書堂」(日本橋通油町):蔦屋重三郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5980

      熈代勝覧(きだいしょうらん):須原屋市兵衛(演:里見浩太朗) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5996

      「べらぼうフェスティバル in 日本橋」(7/47/6)と「べらぼう 蔦屋重三郎 ゆかりの地めぐり(マップ付)」 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6014

      祝 蔦重:結婚、日本橋進出! 「大江戸問屋祭り」7/6()開催:鶴屋喜右衛門(演:風間俊介) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6063

 

●参考資料・出典(ホームページ含む):

歩いてわかる中央区ものしり百科、中央区、国立国会図書館、東京都立図書館、国立文化財機構、東京国立博物館、NHK、プレジデント、サライ、ステラNet、東京都公園協会、浜離宮恩賜庭園、東京都、郵政博物館、「十軒店跡」案内板、福徳神社、京都大学、二条城、メトロポリタン美術館、イチマス田源、蔦重通油町ギャラリー、十思スクエア蔦重ギャラリー、熈代勝覧、Central Tokyo for Tourism(東京中央区オフィシャル観光ガイド)

 

江戸奉公人の心得帖-呉服商白木屋の日常(新潮社)、社史で見る日本経済史 第109巻 復刻 白木屋の歴史/白木屋300年の歴史(ゆまに書房)、白木屋三百年史(白木屋)、白木屋300年の歴史(白木屋)、

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