浜ちゃん

「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑫」
~池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)~
7/22(火) 日本橋大伝馬町「池洲夏祭り」開催!

ドラマで片岡愛之助さんが演じる「鱗形屋孫兵衛」の本屋は、蔦重の「耕書堂」があった通油町に隣接した通旅籠町にあり、隣に「池洲稲荷神社」がありました。7/22()に、日本橋大伝馬町で「池洲夏祭り」が開催されます。

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜” 第19話「鱗の置き土産」

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜” 第19話「鱗の置き土産」 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑫」
~池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)~
7/22(火) 日本橋大伝馬町「池洲夏祭り」開催!

518()放映の第19話では、「鱗形屋孫兵衛」(うろこがたやまごべえ)(演:片岡愛之助)が、店を畳み日本橋を後にしました。須原屋市兵衛(すわらやいちべえ)(演:里見浩太朗)のアシストもあり、鱗形屋は、蔦重の強力なサポーターとなり、「鱗の置き土産」を蔦重に置いていってくれました。

鱗形屋は、別れ際に、これまでのことを蔦重に謝罪し、大火で唯一焼け残った「塩売文太物語(しおうりぶんたものがたり)」の板木を蔦重に渡しました。「塩売文太物語」は蔦重が初めて買った本であり、子供の時に瀬川(演:小芝風花)にプレゼントし、瀬川(瀬以)がボロボロになるまで愛読していた思い出深い本でした。2人は、涙を流しながら笑い合い、ようやく心がつながった様子が描かれていました。

ドラマの後の「べらぼう紀行」では、江戸時代の書物に描かれた鱗形屋の店の様子が紹介され、また、店の隣にあった「池州稲荷神社」も紹介されていました。

タイトル画像は、「三升増鱗祖(みますますうろこのはじめ)」(作:恋川春町)(出典:国立国会図書館)に描かれた鱗形屋孫兵衛の「鶴鱗堂(鶴林堂)」の店先の様子です。向かって左から3番目の看板に、本の題名が記されています。奥に座る人物は孫兵衛とされます。向かって店の右側にあるのが、「池州稲荷神社」です。

画像は、鱗形屋孫兵衛による大ヒット作であり、「鱗の置き土産」の一つである「恋川春町(こいかわはるまち)」(演:岡山天音)の手による「金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)」(出典:東京都立図書館)です。

鱗形屋孫兵衛

安永元年(1772年)、蔦重は23歳の時に吉原に本屋「耕書堂」をオープンさせました。その時の主力商品が「吉原細見(よしわらさいけん)」(吉原のガイドブック)でした。

吉原細見は当時、版元・鱗形屋孫兵衛がほぼ独占していました。鱗形屋孫兵衛は、165860年(万治年間)ごろに大伝馬町に店を構えた老舗で、蔦重の時代には、すでに100年以上の歴史がありました。絵本や浄瑠璃本などを出していましたが、定期刊行物として出版されていたのが、正月に発行される宝船の木版画と、春と秋(旧暦なので正月と7月)に出される「吉原細見」でした。

「吉原細見」は、たいした改訂もされず古いままの情報を掲載し続けた結果、信用はガタ落ちになり、また、吉原も、各地にできた岡場所(私娼街)に客を取られて潰れる見世(みせ)(妓楼)もあり、最盛期は3000人以上いた遊女が3分の2にまで減る、という厳しい状況にありました。第1話で、蔦重が田沼意次(たぬまおきつぐ)(演:渡辺謙)に「岡場所を無くしてくれ」とお願いし、意次から「お前は何かしているのか」と問われ、その後の人生を左右することになるシーンや、幼少時の蔦重を助けた元花魁の「朝顔(あさがお)」(演:愛希れいか)が裸で捨てられていたシーンなど、このストーリーの伏線になっていました。

鱗形屋もさすがにこれではまずいと考え、細見の情報を最新版にするために、吉原のことを知り尽くしているうえに、本の知識もある蔦重に「細見改め」、つまりガイドブックの編集長を任せることにしたのです。

安永3年(1774年)正月、鱗形屋孫兵衛は吉原細見「細見嗚呼御江戸(さいけんああおえど)」を出版しました。この吉原細見の刊記に「此細見改おろし小売取次仕候 新吉原五十間道左りかわ 蔦屋重三郎」と記載されています。「改」は、最新情報を盛り込んだ編集という意味でしょう。この本は、序文を当時浄瑠璃作家として大人気の福内鬼外(ふくちきがい)(平賀源内)が書いたことでも話題を呼びました。これは、蔦重の名前を確認できる最初の出版物です。

「吉原細見」の信用を取り戻した鱗形屋が、続いて発案した大ヒット商品が、「黄表紙」と呼ばれるジャンルの書籍です。「黄表紙」の第一弾は、安永4年(1775年)に恋川春町が執筆し、挿絵も描いた「金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)」という作品で、大河ドラマの副題「~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」は、この本になぞらえていると思われます。「金々先生栄花夢」は、田舎から江戸へ出てきた貧乏な青年が、一睡の夢(あわもちができあがるまでの短い時間)で江戸にありがちな成功と没落を体験する、という物語です。これが成功すると鱗形屋は、物語を戯作者の朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ)(演:尾美としのり)、挿絵を恋川春町が手がけるシリーズで、続々とヒット作を繰り出してゆきました。

「金々」というのは、最新流行のおしゃれをしているさまや最新の遊びを指す当時の流行語で、金々先生とは当世風の伊達男という意味でした。安永2年(1773年)刊「当世風俗通」の著者は、金錦佐恵流(きんきんさえる)こと、朋誠堂喜三二です。喜三二は仲間内で金々先生と呼ばれていました。

安永4年(1775年)正月、蔦重は、鱗形屋孫兵衛による春の吉原細見「細見花の源」にも、改め取次として関与しますが、鱗形屋孫兵衛版の吉原細見の仕事はこれで最後になりました。

安永4年(1775年)5月、大坂版の字引「増補早引節用集」の海賊版が江戸で作られたことが問題になり、大坂の版元は江戸で訴訟を起こしました。この時の証文によれば、版木71枚をあつらえて3400冊摺り立てるという大規模な海賊版でした。3年後の安永7年(1778年)に、海賊版の字引を売りさばいたことで、鱗形屋孫兵衛は処罰を受け、多額の罰金によって経営難に陥りました。この一件への対応で、吉原細見の出版にまで手が回りかねる状況であったのか、鱗形屋孫兵衛は、安永4年(1775年)秋の吉原細見が出版できない状況に陥りました。

吉原細見が出版されないということは、公許の遊郭吉原では許しがたいことであり、吉原のバックアップも得て、安永4年(1775年)秋(7月)の吉原細見「籬之花(まがきのはな)」は、初めて蔦重が発行することになりました。蔦重版細見は、鱗形屋版より一回り大きく、同じ情報量を保持しつつもページ数が減り、それに伴い、版木の枚数や、彫師や摺師への手間賃も減ったため、制作原価を安くおさえて、安く卸売することができました。安永5年(1776年)には鱗形屋も細見の出版を再開しますが、時すでに遅く、使いやすくて正確、かつ安価な蔦屋版に追い落とされる形になりました。

画像は、江戸切絵図(国立国会図書館デジタルコレクション)です。鱗形屋孫兵衛の本屋「鶴鱗堂(鶴林堂)」は、通旅籠町にあり、また、池洲稲荷神社の右隣にありましたので、図に記した場所にありました。通旅籠町は、「旅籠」、つまり宿屋が多かったことが町名の由来とされています。「鶴鱗堂」は、蔦重の「耕書堂」や鶴屋喜右衛門の「仙鶴堂(せんかくどう)」があったメインの通り「日光・奥州街道」から一本南の「大丸新道」と呼ばれた通り沿いにありました。ここには、江戸三大呉服店(越後屋・白木屋・大丸屋)に数えられる「大丸屋」(現在の大丸デパートの前身)があり、大丸の裏通りは「大丸新道」と呼ばれていました。

 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑫」
~池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)~
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池洲稲荷神社

池洲稲荷神社 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑫」
~池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)~
7/22(火) 日本橋大伝馬町「池洲夏祭り」開催!

7/22()、日本橋大伝馬町で「池洲夏祭り」が開催されます。夕方より、「池洲稲荷神社」からスタートし、町会内をこども山車と大人お神輿が巡行するお祭りです。詳細は、以下(↓)をご覧ください。

https://centraltokyo-tourism.com/ja-jp/spot/detail/491552

池洲稲荷神社の近隣には、以前ブログでご紹介させて頂きました通り、蔦重ゆかりの地がありますので、「蔦重ゆかりの地」巡り(↓)もおススメです。

https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6014

また、耕書堂跡の説明板の近隣には、蔦重関連のイベント施設(↓)もあります。全て入場無料です。

https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5980

【アクセス】

【アクセス】 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜⑫」
~池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)~
7/22(火) 日本橋大伝馬町「池洲夏祭り」開催!

池洲稲荷神社は、従前の所在地から現在の場所に移転しています。

【過去ブログ、参考資料・出典】

●過去ブログ:

      伝馬町牢屋敷:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5849

      浜離宮恩賜庭園:徳川将軍家の鷹狩場 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5856

      長崎屋、石町時の鐘:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5861

      日本橋 拾軒店:瀬川「青楼美人合姿鏡」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5907

      日本橋瀬戸物町(福徳神社):鳥山検校 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5920

      狩野派:鳥山石燕、田沼意次、松平定信 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5987

      「耕書堂」(日本橋通油町):蔦屋重三郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5980

      熈代勝覧(きだいしょうらん):須原屋市兵衛(演:里見浩太朗) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5996

      「べらぼうフェスティバル in 日本橋」(7/47/6)と「べらぼう 蔦屋重三郎 ゆかりの地めぐり(マップ付)」 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6014

      祝 蔦重:結婚、日本橋進出! 「大江戸問屋祭り」7/6()開催:鶴屋喜右衛門(演:風間俊介) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6063

      日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6056

 

●参考資料・出典(ホームページ含む):

歩いてわかる中央区ものしり百科、中央区、国立国会図書館、東京都立図書館、国立文化財機構、東京国立博物館、NHK、プレジデント、サライ、ステラNet、東京都公園協会、浜離宮恩賜庭園、東京都、郵政博物館、「十軒店跡」案内板、福徳神社、京都大学、二条城、メトロポリタン美術館、イチマス田源、蔦重通油町ギャラリー、十思スクエア蔦重ギャラリー、熈代勝覧、Central Tokyo for Tourism(東京中央区オフィシャル観光ガイド)

 

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