浜ちゃん

「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉑」
~常盤橋門:北町奉行「曲淵景漸」(演:平田広明)~
<第33話「打壊演太女功徳」は「太夫(太女)が演じるエンタメ(演太女)」の回?:富本斎宮太夫(演:新浜レオン)>

33話では、米の値段が高騰し、江戸市中で打ちこわしが発生。北町奉行の曲淵景漸が、老中や田沼意次に近況の報告をしていました。当時、北町奉行所は、常盤橋門の近くにありました。

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜” 
第33話「打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)」

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜” 
第33話「打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)」 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉑」
~常盤橋門:北町奉行「曲淵景漸」(演:平田広明)~
<第33話「打壊演太女功徳」は「太夫(太女)が演じるエンタメ(演太女)」の回?:富本斎宮太夫(演:新浜レオン)>

831()放映の第33話では、度重なる天災により、米の値段が高騰したため、江戸市中で大名御用達の米屋を狙った打ちこわしが発生しました。江戸城では、北町奉行の曲淵景漸(まがりぶちかげつぐ)(演:平田広明)が、老中たちや田沼意次(たぬまおきつぐ)(演:渡辺謙)に、近況の報告をしていました。

米の値段を下げるために、蔦重が、富本斎宮太夫(とみもといつきだゆう)(演:新浜レオン)や、義兄の次郎兵衛(演:中村蒼)、芸者たちと一緒に練り歩き、幟を立てて、ビラを配るシーンが描かれていました。

富本斎宮太夫は、ドラマの中で、“馬面太夫”として登場した富本豊前太夫(とみもとぶぜんだゆう)(演:寛一郎)の父である、富本節創始者・富本豊前掾(とみもとぶぜんのじょう)の弟子です。豊前太夫は富本節を全盛に導きましたが、斎宮太夫が後見としてそれに大きく寄与しました。

33話のタイトル、「打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)」は、ネット上で、「エンターテイメント⇒エンタメ⇒演太女」という意味、との記載がありますが、「太女(ため)」という日本語はないようです。「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の、穿ちに富んだ演出をされている、森下佳子さんとNHKの制作陣の方々が、「演太女=エンタメ」という意味だけで、このタイトルにしたのではないのでは、と考えています。

33話で、富本斎宮太夫が、「お救い銀が出る」と、美声を響かせて、打ちこわしをしている人々の前で演じていましたが、富本斎宮太夫の「太夫」を「太女」に置き換えた、「演じる太夫⇒演じる太女⇒演太女」と、「エンターテイメント⇒エンタメ⇒演太女」の、二重の意味を持たせているのではないかと思います。ネット上には、このアイデアはまだ載っていませんので、これが事実であれば、ちょっとした発見ですね。

33話のタイトル、「打壊演太女功徳」は、打壊(打ちこわし)を、演太女(エンタメ=娯楽、と、それを演じる太女=(富本斎宮)太夫)によって鎮めて、功徳(善い行い)につなげる、という意味でしょうか。

ドラマのストーリーとしては、ずっと蔦重を助けてきた「新さん」こと、小田新之助(演:井之脇海)が命を落とした、悲しい回でした。新さんが死ぬ間際に、「妻子は守れなかったが、世の中を明るくする男、蔦重を守れて良かった」と言っていましたが、これが、功徳(善い行い)ということなのかもしれません。

画像は、天明の打ちこわしで襲われた米屋の様子を描いた「新建哉亀蔵」(出典:国立国会図書館)です。

ドラマととてもご縁の深い、
北町奉行「曲淵景漸(まがりぶちかげつぐ)」(演:平田広明)

曲淵景漸は、明和6年(1769年)、45歳のときに、江戸の北町奉行に就任しました。63歳で職を辞するまで、在任期間は1710か月におよび、歴代の町奉行95人中6番目に長く、名奉行として評判が高かった人物です。

33話の冒頭で、「天明7年(1787年)5月に打ちこわしが発生した」と、九郎助稲荷(くろすけいなり)(語り:綾瀬はるか)が語るシーンがありましたが、史実でも、江戸で打ちこわしが勃発し、5月下旬の5日間に、約5千人が千軒近い米屋・札差・豪商を襲いました。

ドラマの中で、「米がなければ犬を食え」と役人から言われた、というシーンがありましたが、松平定信(まつだいらさだのぶ)(演:井上祐貴)の家臣・水野為長による「よしの冊子」(よしのぞうし)に、曲淵景漸が「犬を食え」と言った、と記されています。

それによると、町人たちが夫食(ぶじき)(食糧)を願い出たときに、曲淵景漸は、「むかし飢饉のときは犬を食った。犬一匹は銭7貫文程度だ。犬を食ったらいいだろう。」と答えたため、町人たちは怒り、打ちこわしになった、ということです。

しかしながら、曲淵景漸は、実際にはこのような発言はしておらず、大衆の間に「奉行はこう言った」という虚偽の風説が流布した、とも言われています。

平田広明さんが演じる北町奉行・曲淵景漸は、第33話で初めて登場しましたが、これまでのドラマのストーリーとも深いご縁があります。

15話で、須原屋市兵衛(すわらやいちべえ)(演:里見浩太朗)のお店を訪れていた杉田玄白(すぎたげんぱく)(演:山中聡)は、医学書「解体新書」を刊行しましたが、その大きな契機になったのが、「腑分け」(人体解剖)の見学でした。この「腑分け」の見学を許可したのが、曲淵景漸でした。

また、第28話で、田沼意知(たぬまおきとも)(演:宮沢氷魚)が、江戸城内において佐野政言(さのまさこと)(演:矢本悠馬)に突然斬りつけられ、亡くなりましたが、このとき、佐野政言の取り調べをしたのが、曲淵景漸でした。

下の画像は、東京駅の「グラントウキョウノースタワー」にある、北町奉行所跡の石碑(上段)と、その場所を示した地図(下段)です。北町奉行所の大半が、現在のJR東京駅の敷地内にありました。

 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉑」
~常盤橋門:北町奉行「曲淵景漸」(演:平田広明)~
<第33話「打壊演太女功徳」は「太夫(太女)が演じるエンタメ(演太女)」の回?:富本斎宮太夫(演:新浜レオン)>
 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉑」
~常盤橋門:北町奉行「曲淵景漸」(演:平田広明)~
<第33話「打壊演太女功徳」は「太夫(太女)が演じるエンタメ(演太女)」の回?:富本斎宮太夫(演:新浜レオン)>

常盤橋門(ときわばしもん)

常盤橋門(ときわばしもん) 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉑」
~常盤橋門:北町奉行「曲淵景漸」(演:平田広明)~
<第33話「打壊演太女功徳」は「太夫(太女)が演じるエンタメ(演太女)」の回?:富本斎宮太夫(演:新浜レオン)>

33話のドラマの後のナレーションで、当時、北町奉行所は常盤橋門の近くにあった、と紹介されていました。

タイトル画像の、手前にある橋が「常磐橋」で、奥にある石垣が「常盤橋門跡」です。

江戸時代の城門跡・常盤橋門跡は、日本橋本石町の日本銀行本店の近くにあります。中央区と千代田区との区境を流れる日本橋川には、上流から、「新常盤橋」「常磐橋」「常盤橋」の、3つの「ときわばし」が架かっています。常盤橋門跡の前に架かっている橋は、「盤」の文字に「磐」を当てた「常磐橋」で、現存する東京最古の石造橋です。「盤」の部首の「皿」が割れて縁起が悪いことから、「磐」を当てた、と言われています。

常盤橋門は江戸城内郭の正門(大手門)に通じる「外廓の正門」に当たる重要な城門として、浅草口・追手口などとも称され、江戸城から本町通り・浅草橋門を経て奥州道へと通じる交通の要衝でした。このルートの途上には、蔦重の本屋「耕書堂」がありました(画像「江戸切絵図」、出典:国立国会図書館)。

【過去ブログ、参考資料・出典】

●過去ブログ:

      伝馬町牢屋敷:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5849

      浜離宮恩賜庭園:徳川将軍家の鷹狩場 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5856

      長崎屋、石町時の鐘:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5861

      日本橋 拾軒店:瀬川「青楼美人合姿鏡」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5907

      日本橋瀬戸物町(福徳神社):鳥山検校 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5920

      狩野派:鳥山石燕、田沼意次、松平定信 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5987

      「耕書堂」(日本橋通油町):蔦屋重三郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5980

      熈代勝覧(きだいしょうらん):須原屋市兵衛(演:里見浩太朗) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5996

      「べらぼうフェスティバル in 日本橋」(7/47/6)と「べらぼう 蔦屋重三郎 ゆかりの地めぐり(マップ付)」 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6014

      祝 蔦重:結婚、日本橋進出! 「大江戸問屋祭り」7/6()開催:鶴屋喜右衛門(演:風間俊介) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6063

      日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6056

      池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)、7/22() 日本橋大伝馬町「池洲夏祭り」開催! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6095

      小伝馬町・大伝馬町:宿屋飯盛(石川雅望)(演:「ピース」又吉直樹) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6102

      末廣神社「元葭原夕暮れ参り」:「吉原細見」のルーツは「元吉原(元葭原)」にあります https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6143

      伝馬町牢屋敷:田沼意知(演:宮沢氷魚)、佐野政言(演:矢本悠馬) 「中央区まちかど展示館 夏休みスタンプラリー&クイズ」開催中 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6149

      830日(土)「歴史を旅するプロジェクションマッピング Vol.2」開催(中央区立日本橋中学校) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6194

      高尾稲荷神社(日本橋箱崎町):遊女の一生、誰袖(演:福原遥) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6197

      薬研堀(薬研堀不動院):礒田湖龍斎(いそだこりゅうさい)(演:鉄拳) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6179

      椙森神社:北尾政美(きたおまさよし)(演:高島豪志) 宝くじファン必見、92日(くじの日)に椙森神社にて富塚祈願祭が開催されます! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6207

      101日(水)「トークショーin中央区」開催:蔦重の母「つよ」(演:高岡早紀) 申込締切97日(日)(応募多数の場合は抽選) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6219

 

●参考資料・出典(ホームページ含む):

歩いてわかる中央区ものしり百科、中央区、国立国会図書館、東京都立図書館、国立文化財機構、東京国立博物館、NHK、プレジデント、サライ、ステラNet、東京都公園協会、浜離宮恩賜庭園、東京都、郵政博物館、「十軒店跡」案内板、福徳神社、京都大学、二条城、メトロポリタン美術館、イチマス田源、蔦重通油町ギャラリー、十思スクエア蔦重ギャラリー、熈代勝覧、Central Tokyo for Tourism(東京中央区オフィシャル観光ガイド)、東京大学、江戸東京博物館、中央区沿革図集、高尾稲荷神社、東北大学、東京富士美術館、薬研堀不動院、椙森神社、烏森神社、誠向山正法寺

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