浜ちゃん

「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉝」
~十返舎一九墓(東陽院・勝どき)、長谷川町(三光稲荷神社・人形町): 十返舎一九(じっぺんしゃいっく)~

44話で、重田貞一(のちの十返舎一九)が蔦屋耕書堂に現れ、蔦重の下で働きたいと、平賀源内が作った「相良凧」を渡し、平賀源内が生きていると伝えました。十返舎一九は、中央区の長谷川町に住んでおり、また、お墓が中央区勝どきの東陽院にあります。

 

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜”
第44話「空飛ぶ源内」

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜”
第44話「空飛ぶ源内」 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉝」
~十返舎一九墓(東陽院・勝どき)、長谷川町(三光稲荷神社・人形町): 十返舎一九(じっぺんしゃいっく)~

1116日(日)放映の第44話で、ていの体調が優れず、蔦重も沈みこみ、店の存続が危ぶまれるなか、駿府生まれの重田貞一(のちの十返舎一九)(演:井上芳雄)と名乗る若者が、蔦屋耕書堂に現れました。

貞一は、蔦重の下で書きたいと売り込みますが、蔦重からは、「これだけの腕があれば、どこでも雇ってもらえる」と、追い返されそうになります。そこで貞一は、「私は蔦屋に恋い焦がれて」と言いつつ、袖の下として、平賀源内(ひらがげんない)(演:安田顕)が作った「相良凧」を渡しました。相良は田沼意次(たぬまおきつぐ)(演:渡辺謙)が治めていた場所で、そこで平賀源内が生きている、と蔦重に伝えました。

下の画像は、ドラマの中で、蔦重が源内生存について調べているときに、大田南畝(おおたなんぽ)(演:桐谷健太)から譲り受けた、源内の描いた「西洋婦人画」(出典:神戸市立博物館)です。源内の遺品はほとんど残っていない中で、現在まで保存状態もよく残っている貴重な作品です。

 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉝」
~十返舎一九墓(東陽院・勝どき)、長谷川町(三光稲荷神社・人形町): 十返舎一九(じっぺんしゃいっく)~

江戸時代の相良、現在の静岡県牧之原市には、田沼意次が遠州相良(えんしゅうさがら)藩主を務めた相良城がありました。相良には、「源内は生きていた」という伝説が残っています。

画像は、静岡県牧之原市の浄心寺にある、平賀源内の墓です(出典:静岡県観光協会)。ご興味のある方は、以下の「ステラnet」(NHK財団)のホームページ(↓)に、「源内生存説」の説明があります。また、牧之原市に伝わる伝統的な凧で、長崎遊学で得た知識をもとに、源内が考案したものとされている、「相良凧」についての説明もあります。

https://www.steranet.jp/articles/-/4343

十返舎一九(じっぺんしゃ いっく)(演:井上芳雄)

十返舎一九(じっぺんしゃ いっく)(演:井上芳雄) 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉝」
~十返舎一九墓(東陽院・勝どき)、長谷川町(三光稲荷神社・人形町): 十返舎一九(じっぺんしゃいっく)~

十返舎一九は、滑稽本の代名詞「東海道中膝栗毛」の作者としてよく知られている人物です。

一九は、本名を重田貞一(しげたさだかつ)、幼名は市九(いちく)、通称は与七(よしち)といい、筆名の「一九」は幼名からきています。「十返舎」は、香道でいう黄熟香(おうじゅくこう)(蘭奢待(らんじゃたい))の十度返し(繰り返し香りを楽しむこと)からきています。

当初、大坂町奉行・小田切土佐守の配下として仕えましたが、後に武家奉公を致仕し、浄瑠璃・歌舞伎脚本作者の近松門左衛門の門下に入りました。最初の戯作は、寛政元年(1789年)に大坂で上演の浄瑠璃「木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがっせん)」で、この時は近松余七の名で合作者として加わりました。

「木下蔭狭間合戦」は、第44話で、大きな凧を背負って耕書堂に現れた重田貞一(のちの十返舎一九)が、滝沢瑣吉(たきざわさきち)(のちの曲亭馬琴(きょくていばきん))(演:津田健次郎)から塩をまかれ、追い出されそうになったときに、「こんなものを書いている」と見せていた本です。

一九は、寛政元年(1789年)5月、江戸に出て、蔦屋耕書堂に寄宿し、蔦重の下で作品を作る手伝いをするなど、働き始めました。絵心があったことから、山東京伝(さんとうきょうでん)(演:古川雄大)の黄表紙の挿絵などを描いています。その後、耕書堂を出て、長谷川町(現在の人形町界隈)に住みました。

享和2年(1802年)から刊行が始まった膝栗毛シリーズ(「東海道中膝栗毛」「続膝栗毛」)は、狂言などをパロディ化しつつガイドブックまで兼ねた滑稽本として好評を博し、21年間に正・続合わせて43冊も刊行されました。

「東海道中膝栗毛」(画像:出典「国立国会図書館」)は、神田八丁堀の裏長屋に住む「栃面屋弥次郎兵衛(とちめんややじろべえ)」(通称「弥次さん」)と旅役者あがりの喜多八(きたはち)(通称「喜多さん」)の二人連れが、江戸から東海道を上って「伊勢詣で」(伊勢神宮への参拝)を果たし、京都・大坂にいたる珍道中を描いた滑稽本です。

「東海道中膝栗毛」の版元は「村田屋治郎兵衛」(むらたやじろべえ)、続編の「続膝栗毛」は複数の版元が刊行しており、蔦重はかかわっていません。なぜなら東海道中膝栗毛の第1作が刊行される5年前、寛政9年(1797年)に蔦重は他界しています。蔦重は、江戸時代を代表するベストセラー「東海道中膝栗毛」に直接かかわってはいませんが、まだ何者でもなかった十返舎一九の文才と画才を認め、ベストセラー作家になるチャンスを与えてくれました。

一九は、黄表紙・滑稽本・洒落本・合巻・人情本・咄本など数多くの著作を世に出し、原稿料で生活する職業作家の先駆けとなりました。

十返舎一九墓(勝どき・東陽院)

十返舎一九墓(勝どき・東陽院) 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉝」
~十返舎一九墓(東陽院・勝どき)、長谷川町(三光稲荷神社・人形町): 十返舎一九(じっぺんしゃいっく)~

十返舎一九の墓は、日蓮宗寺院・真圓山東陽院(しんえんざん とうよういん)(中央区勝どき4-12-9)にあります。

タイトル画像は、門前に立つ、徳川夢声の筆による「十返舎一九墓所」の石碑、画像は真圓山東陽院です。

天保2年(1831年)に67歳で没した一九は、浅草永住町(現在の台東区元浅草)の東陽院に葬られました。その後、関東大震災で被災した東陽院は、昭和2年(1927年)に現在の中央区勝どきへ本堂を建立、同5年に鉄筋コンクリート造の屋内墓地が完成し、重田家(一九とその妻子)の墓塔もこの時に移設されました。

墓塔には、正面向かって右から二番目に一九の戒名「心月院一九日光信士」が刻まれ、台石中央には一九が用いた印形(熊手と(貞)の組合せ)が施されています。また、向かって左側面には「此の世をは とりやお暇に 線香の 煙とともに 灰さようなら」と一九らしい歯切れの良いしゃれが利いた辞世の句も刻まれています。

一九は、「自分の体をそのまま火葬してくれ」という遺言を残し、仲間たちが実際にそうすると、副葬品に仕込んだ花火に火がつき、打ち上げ花火が上がって皆を仰天させたという伝説が残っています。これは後世の落語家が作った小噺であるとの説もありますが、そんな伝説を生じさせるくらい、愉快な人物として知られていたのでしょう。

長谷川町(三光稲荷神社・人形町)

長谷川町(三光稲荷神社・人形町) 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㉝」
~十返舎一九墓(東陽院・勝どき)、長谷川町(三光稲荷神社・人形町): 十返舎一九(じっぺんしゃいっく)~

ドラマ第44話の後のナレーションで紹介されていましたが、一九は、中央区の長谷川町(現在の人形町界隈)に住んでいました。

長谷川町には、1019()放映の第40話で登場した、勝川春朗(かつかわしゅんろう)〈のちの葛飾北斎(かつしかほくさい)〉(演:くっきー!)の師匠である、勝川春章(かつかわしゅんしょう)(演:前野朋哉)が住んでいました。

長谷川町については、以下のブログ(↓)をご覧ください。

https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6238

画像は、ナレーションで放映されていた、「三光稲荷神社」の入り口です。以前のブログで掲載した入口と反対側なので、放映されていた風景と同じになるように、改めて写真を撮影してきました。

【過去ブログ、参考資料・出典】

●過去ブログ:

      伝馬町牢屋敷:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5849

      浜離宮恩賜庭園:徳川将軍家の鷹狩場 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5856

      長崎屋、石町時の鐘:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5861

      日本橋 拾軒店:瀬川「青楼美人合姿鏡」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5907

      日本橋瀬戸物町(福徳神社):鳥山検校 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5920

      狩野派:鳥山石燕、田沼意次、松平定信 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5987

      「耕書堂」(日本橋通油町):蔦屋重三郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5980

      熈代勝覧(きだいしょうらん):須原屋市兵衛(演:里見浩太朗) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5996

      「べらぼうフェスティバル in 日本橋」(7/47/6)と「べらぼう 蔦屋重三郎 ゆかりの地めぐり(マップ付)」 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6014

      祝 蔦重:結婚、日本橋進出! 「大江戸問屋祭り」7/6()開催:鶴屋喜右衛門(演:風間俊介) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6063

      日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6056

      池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)、7/22() 日本橋大伝馬町「池洲夏祭り」開催! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6095

      小伝馬町・大伝馬町:宿屋飯盛(石川雅望)(演:「ピース」又吉直樹) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6102

      末廣神社「元葭原夕暮れ参り」:「吉原細見」のルーツは「元吉原(元葭原)」にあります https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6143

      伝馬町牢屋敷:田沼意知(演:宮沢氷魚)、佐野政言(演:矢本悠馬) 「中央区まちかど展示館 夏休みスタンプラリー&クイズ」開催中 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6149

      830日(土)「歴史を旅するプロジェクションマッピング Vol.2」開催(中央区立日本橋中学校) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6194

      高尾稲荷神社(日本橋箱崎町):遊女の一生、誰袖(演:福原遥) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6197

      薬研堀(薬研堀不動院):礒田湖龍斎(いそだこりゅうさい)(演:鉄拳) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6179

      椙森神社:北尾政美(きたおまさよし)(演:高島豪志) 宝くじファン必見、92日(くじの日)に椙森神社にて富塚祈願祭が開催されます! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6207

      101日(水)「トークショーin中央区」開催:蔦重の母「つよ」(演:高岡早紀) 申込締切97日(日)(応募多数の場合は抽選) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6219

21      常盤橋門:北町奉行「曲淵景漸」(演:平田広明)<第33話「打壊演太女功徳」は「太夫(太女)が演じるエンタメ(演太女)」の回?:富本斎宮太夫(演:新浜レオン)> https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6274

22      【~蔦屋重三郎と絵師たち~、「第18 EDO ART EXPO(江戸アートエキスポ)」開催(926日(金)~1014日(火))】 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6292

23      鉄砲洲(鐵砲洲稲荷神社):平秩東作(演:木村了) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6180

24      日本橋中洲(清洲橋、真砂座跡碑)、薬研堀(薬研堀不動院):田沼意次(演:渡辺謙)、松平定信(演:井上祐貴) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6162

25      秋の中央区はイベント盛りだくさん! 【江戸の出版文化と日本橋 ―蔦屋重三郎とその周辺―】 925()119()  特別展開催中 (本の森ちゅうおう)(入場無料) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6327

26      日本橋浜町、蘭学事始地碑(明石町):杉田玄白 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6012

27      三光稲荷神社(人形町):勝川春章(演:前野朋哉) 1019日(日)放映の第40話は、勝川春朗(のちの葛飾北斎)を演じる「くっきー!」登場 & お笑い芸人オンパレード! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6238

28      賀茂真淵(日本橋浜町):加藤千蔭(演:中山秀征)、松平定信(演:井上祐貴) 第28話 & 第29話は第41話の伏線でした! 第29話「艶二郎」と第41話「加藤千蔭」とのご縁もご紹介します https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6406

29      日本橋馬喰町(初音の馬場、初音森神社、郡代屋敷)、薬研堀、大丸新道: 喜多川歌麿、高島おひさ、万次郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6380

30      鐡砲洲稲荷神社、佃の渡し:長谷川平蔵(演:中村隼人) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6415

31      人足寄場(中央区佃)、石川島燈台跡、リバーシティ21、中洲(日本橋中洲):長谷川平蔵 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6419

32      日本橋本町(Daiichi Sankyoくすりミュージアム)、十軒店: 式亭三馬(演:荒井雄斗)

 

●参考資料・出典(ホームページ含む):

十返舎一九集(叢書江戸文庫 43)(国書刊行会)、

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