浜ちゃん

「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㊱」
~堺町・葺屋町芝居町跡(人形町):富本節~

12話で、蔦重が発行した「富本正本」が大ヒットした様子が描かれていました。この蔦重初の富本浄瑠璃が演じられたのは、「葺屋町」(現在の人形町)にある「市村座」でした。

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜”
第11話「富本、仁義の馬面」
第12話「俄(にわか)なる『明月余情』」
第45話「その名は写楽」

“べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜”
第11話「富本、仁義の馬面」
第12話「俄(にわか)なる『明月余情』」
第45話「その名は写楽」 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㊱」
~堺町・葺屋町芝居町跡(人形町):富本節~

316()放映の第11話で、富本豊志太夫(とみもととよしだゆう)(演:寛一郎)と、一緒に舞台に登場していた、役者の市川門之助(いちかわもんのすけ)(演:濱尾ノリタカ)の2人に、蔦重は心を奪われました。まだ太夫が売れていなかった頃、遊び仲間だった2人は、「役者は出入り禁止だ」といわれ、吉原を裸で追い出されました。それ以来、2人は吉原嫌いになりますが、蔦重が駆けずり回り、最後には、女郎たちに富本を聴かせ、女郎たちが涙を流して感動する姿を見て、2人は蔦重(=吉原)を助けることを決意しました。このシーンも、心に残る、美しい演出でしたね。

323()放映の第12話で、馬面太夫(うまづらだゆう)こと、富本豊志太夫が、富本豊前太夫(とみもとぶぜんだゆう)を襲名し、蔦重が発行した「富本正本(とみもとしょうほん)」が大ヒットした様子が描かれていました。また、吉原の祭り「俄(にわか)」が開催され、富本豊前太夫が美声を披露していました。

1123()放映の第45話で、市川門之助が蔦重の前に現れ、山車が出て、役者たちが通りで踊る「曽我祭」が開催されることになった、と伝えました。これが、蔦重の「写楽プロジェクト」のヒントになりました。

画像は、「曽我祭の役者たち・二代目市川門之助と三代目瀬川菊之丞」(出典:東京国立博物館)です。

タイトル画像は、人形町通りにある、「江戸落語」の「からくり櫓(やぐら)」時計台です。通りの反対側にある「町火消し」の「からくり櫓」時計台は、地下鉄工事のため、202612月(予定)まで撤去中です。

店舗を独立し、富本正本の出版も開始

店舗を独立し、富本正本の出版も開始 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㊱」
~堺町・葺屋町芝居町跡(人形町):富本節~

蔦重は、義兄・蔦屋次郎兵衛(演:中村蒼)の店先を借りて商売をしていましたが、安永6年(1777年)、その4軒隣に独立した店を構えるようになり、同時期に、富本豊前太夫も二代目を襲名しました。

蔦重はこの好機を逃しませんでした。

安永6年(1777年)11月、市村座顔見世狂言「児華表飛入阿紫(ちごとりいとびいりきつね)」二番目に演じられた富本浄瑠璃「夫婦酒替奴中仲(めうとざけかはらぬなかなか)」の正本が、現在確認しうる蔦重版富本正本の最古のものです。富本正本とは、三味線の伴奏に合わせて語る浄瑠璃において、富本節の詞章(ししょう)(語り)を記した書物です。

蔦重が初めて手掛けた富本浄瑠璃「夫婦酒替奴中仲」(写真、出典:東京大学 黒木文庫)に、「富本豊前太夫」の記載があります。これは、富本豊前太夫の代表作となるものであり、太夫の、そして富本浄瑠璃全般の幕開けを告げるものとなりました。二代目富本豊前太夫が火付け役となり、田沼時代の江戸では、浄瑠璃が一大ブームとなりました。

堺町・葺屋町芝居町跡(人形町)

堺町・葺屋町芝居町跡(人形町) 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㊱」
~堺町・葺屋町芝居町跡(人形町):富本節~

江戸時代、堺町・葺屋町の界隈(現在の人形町界隈)は芝居小屋や茶屋などが多数集まる「芝居町」として大変なにぎわいをみせていました。

堺町は江戸歌舞伎の始祖、中村勘三郎が寛永元年(1624年)に創立した猿若座(のちの中村座)が、慶安4年(1651年)から芝居小屋を設けていた町です。また、葺屋町は芝居の江戸三座のひとつである村山座(のちの市村座)が、寛永11年(1634年)に堺町に建てた芝居小屋を移転して興行をした芝居町です。

堺町ととなりの葺屋町は、あわせて二丁町と呼ばれていました。画像は、歌川広重が当時の「堺町・葺屋町」を描いた、「東都名所二丁町芝居繁栄之図」です。通りに大勢の人がいる様子が描かれています。いずれの芝居小屋も、この絵が描かれた直後、天保の改革により、天保13年(1842年)に浅草の猿若町に移転しました。

吉原は、蔦重の時代には浅草寺裏にありましたが、明暦3年(1657年)の江戸の大火以前は、堺町・葺屋町の芝居町の近くにありました。芝居町も吉原も、もともと人形町界隈にありましたが、まず、吉原が浅草界隈に移転し、その後、芝居町が同じエリアに移転しました。人形町界隈にあった「元吉原」については、以下のブログ(↓)をご覧ください。

https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6143

1125日(火)掲載のブログ(↓)で、富本豊前太夫の自宅は、元柳橋(現在の中央区東日本橋)のそばにあり、柳橋から猪牙舟に乗って大川(隅田川)をのぼり、蔦重のいる「吉原」に往来していたであろうことを紹介させて頂きました。

https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5951

今回ご紹介させて頂きました「堺町・葺屋町」(現在の中央区日本橋人形町)も、富本豊前太夫の自宅の近く(地下鉄でひと駅の距離)にあります。豊前太夫は、仕事にも遊びにも便利な場所を自宅としており、「職住近接」ならぬ、「職住+遊 近接」の生活をしていたのでしょうね。

画像出典:Tokyo Museum Collectionhttps://museumcollection.tokyo/works/6245005/

アクセス

アクセス 「中央区とのご縁:べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜㊱」
~堺町・葺屋町芝居町跡(人形町):富本節~

人形町駅を出て、人形町交差点から人形町通りの左側の歩道を小伝馬町駅方向に進むと、スターバックスの前の歩道脇に、「堺町・葺屋町芝居町跡」の説明版があります。

そこからさらに小伝馬町駅方向に進むと、右手に三菱UFJ銀行がありますので、その角を曲がると大伝馬本町通りに入ります。通りを進むと、ホテル「東横イン」がありますので、その向かいの歩道脇に、蔦重の「耕書堂」跡の説明版があります。

 

【過去ブログ、参考資料・出典】

●過去ブログ:

      伝馬町牢屋敷:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5849

      浜離宮恩賜庭園:徳川将軍家の鷹狩場 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5856

      長崎屋、石町時の鐘:平賀源内 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5861

      日本橋 拾軒店:瀬川「青楼美人合姿鏡」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5907

      日本橋瀬戸物町(福徳神社):鳥山検校 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5920

      狩野派:鳥山石燕、田沼意次、松平定信 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5987

      「耕書堂」(日本橋通油町):蔦屋重三郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5980

      熈代勝覧(きだいしょうらん):須原屋市兵衛(演:里見浩太朗) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5996

      「べらぼうフェスティバル in 日本橋」(7/47/6)と「べらぼう 蔦屋重三郎 ゆかりの地めぐり(マップ付)」 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6014

      祝 蔦重:結婚、日本橋進出! 「大江戸問屋祭り」7/6()開催:鶴屋喜右衛門(演:風間俊介) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6063

      日本橋「白木屋」と「名水白木屋の井戸」:白木屋彦太郎(演:堀内正美) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6056

      池洲稲荷神社:鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)、7/22() 日本橋大伝馬町「池洲夏祭り」開催! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6095

      小伝馬町・大伝馬町:宿屋飯盛(石川雅望)(演:「ピース」又吉直樹) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6102

      末廣神社「元葭原夕暮れ参り」:「吉原細見」のルーツは「元吉原(元葭原)」にあります https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6143

      伝馬町牢屋敷:田沼意知(演:宮沢氷魚)、佐野政言(演:矢本悠馬) 「中央区まちかど展示館 夏休みスタンプラリー&クイズ」開催中 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6149

      830日(土)「歴史を旅するプロジェクションマッピング Vol.2」開催(中央区立日本橋中学校) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6194

      高尾稲荷神社(日本橋箱崎町):遊女の一生、誰袖(演:福原遥) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6197

      薬研堀(薬研堀不動院):礒田湖龍斎(いそだこりゅうさい)(演:鉄拳) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6179

      椙森神社:北尾政美(きたおまさよし)(演:高島豪志) 宝くじファン必見、92日(くじの日)に椙森神社にて富塚祈願祭が開催されます! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6207

      101日(水)「トークショーin中央区」開催:蔦重の母「つよ」(演:高岡早紀) 申込締切97日(日)(応募多数の場合は抽選) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6219

21      常盤橋門:北町奉行「曲淵景漸」(演:平田広明)<第33話「打壊演太女功徳」は「太夫(太女)が演じるエンタメ(演太女)」の回?:富本斎宮太夫(演:新浜レオン)> https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6274

22      【~蔦屋重三郎と絵師たち~、「第18 EDO ART EXPO(江戸アートエキスポ)」開催(926日(金)~1014日(火))】 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6292

23      鉄砲洲(鐵砲洲稲荷神社):平秩東作(演:木村了) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6180

24      日本橋中洲(清洲橋、真砂座跡碑)、薬研堀(薬研堀不動院):田沼意次(演:渡辺謙)、松平定信(演:井上祐貴) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6162

25      秋の中央区はイベント盛りだくさん! 【江戸の出版文化と日本橋 ―蔦屋重三郎とその周辺―】 925()119()  特別展開催中 (本の森ちゅうおう)(入場無料) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6327

26      日本橋浜町、蘭学事始地碑(明石町):杉田玄白 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6012

27      三光稲荷神社(人形町):勝川春章(演:前野朋哉) 1019日(日)放映の第40話は、勝川春朗(のちの葛飾北斎)を演じる「くっきー!」登場 & お笑い芸人オンパレード! https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6238

28      賀茂真淵(日本橋浜町):加藤千蔭(演:中山秀征)、松平定信(演:井上祐貴) 第28話 & 第29話は第41話の伏線でした! 第29話「艶二郎」と第41話「加藤千蔭」とのご縁もご紹介します https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6406

29      日本橋馬喰町(初音の馬場、初音森神社、郡代屋敷)、薬研堀、大丸新道: 喜多川歌麿、高島おひさ、万次郎 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6380

30      鐡砲洲稲荷神社、佃の渡し:長谷川平蔵(演:中村隼人) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6415

31      人足寄場(中央区佃)、石川島燈台跡、リバーシティ21、中洲(日本橋中洲):長谷川平蔵 https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6419

32      日本橋本町(Daiichi Sankyoくすりミュージアム)、十軒店: 式亭三馬(演:荒井雄斗) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6429

33      十返舎一九墓(東陽院・勝どき)、長谷川町(三光稲荷神社・人形町): 十返舎一九(じっぺんしゃいっく) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=6432

34      柳橋、薬研堀不動院: 富本豊前太夫(演:寛一郎)、狂歌連、「鬼平犯科帳」長谷川平蔵(はせがわへいぞう)(演:中村隼人) https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=5951

35      亀島川と亀島橋(中央区八丁堀): 東洲斎写楽

 

●参考資料・出典(ホームページ含む):

今 浮世絵が面白い!-浮世絵と浮世絵師を100倍楽しむ!! 第4(Gakken Mook) 東洲斎写楽(学研マーケティング)、浮世絵大系 7 写楽(集英社)、これ1冊でわかる!蔦屋重三郎と江戸文化-元祖・敏腕プロデューサーの生涯と江戸のアーティストたちの謎を解き明かす 写楽・歌麿の仕掛人(Gakken)、三人写楽謎錦絵(さんにんしゃらくあやしのにしきえ)-江戸学が捉えた写楽(旺文社)、実証写楽は北斎である-西洋美術史の手法が解き明かした真実(祥伝社)、写楽(シリーズ太陽 4 太陽浮世絵シリーズ 1975)(平凡社)、写楽(アートデイズ)、写楽(角川書店)、憧れ写楽(文藝春秋)、

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